大正12(1923)年生まれ、現在92才の作家・佐藤愛子さんのエッセイ集『九十歳。何がめでたい』が15万部を超えるベストセラーになっている。
人の子育てに対するネット上の批判を《いちいちうるせえ》と一刀両断し、そんな社会の風潮を《イチャモンつけの元祖である私でさえただ呆気にとられるばかり》とピシャリ。甘ったれた悩み相談には《私にいわせれば「怠け者」だ》《ふりかかった不幸災難は、自分の力でふり払うのが人生修行というものだ》と喝破する。鋭く的を射た“怒りの金言”に、多数の読者から絶賛の声が届いている。
《聞えない》《力が抜ける》《あちこちがむやみに痒い》…次々に起こる体の故障について、著書の中で佐藤さんは嘆く。ところが周囲には「老化」のひと言ですまされてしまい、そのつらさを理解してもらえない。実際、それらを体験していない私たちには全くわからない…。
98才の評論家・随筆家の吉沢久子さんも言う。
「耳がちょっと遠いので、はっきり聞こえない時は、何度も言ってもらうようにお願いするの。おしゃべりするのもだんだん息苦しくなってきました。
血液が足りなくなると心臓の働きが悪くなるそうなので、今は5週間に1回、病院で輸血してもらうために入院しています」
高齢になれば骨粗鬆症が進んで骨折もしやすくなる。94才にしてなお舞台に立ち続ける現役最高齢の漫才師・内海桂子さんは、84才の時に初めて右手首を骨折。「一日でも早く三味線が弾けるように」と懸命のリハビリに励んだ。85才で乳がんが見つかり、87才のときには大腿骨を骨折する大けがをした。
ニュースでは、老後破産や介護地獄など、とかく長く生きることに伴う大変さばかりが伝えられる。そのためか、中高年向けの雑誌では「ピンピンコロリ」の言葉が飛び交い、本誌でも、認知症予防や健康に関する記事は常に人気企画だ。
しかし、吉沢さんは、「年だから、病気するのも当たり前。生まれてから98年間、心臓だって一度も止まらずに動いているんですから。よく働いてくれました。今、止まっても文句は言いませんよ。だから、病気になってもいいですが、病人になってはいけないと思ってます」と朗らかに語る。