92才の作家・佐藤愛子さんのエッセイ集『九十歳。何がめでたい』が15万部を超えるベストセラーになっている。
大正12(1923)年生まれ、現在92才の作家・佐藤愛子さんのエッセイ集『九十歳。何がめでたい』が15万部を超えるベストセラーになっている。
人の子育てに対するネット上の批判を《いちいちうるせえ》と一刀両断し、そんな社会の風潮を《イチャモンつけの元祖である私でさえただ呆気にとられるばかり》とピシャリ。甘ったれた悩み相談には《私にいわせれば「怠け者」だ》《ふりかかった不幸災難は、自分の力でふり払うのが人生修行というものだ》と喝破する。鋭く的を射た“怒りの金言”に、多数の読者から絶賛の声が届いている。
とはいえ、歳を重ねると体の不調もあるだろう。しかし、高齢者は体の衰えを自覚し、不自由を感じながらも、それでも“普通に”生きていこうとしている。
「年寄り扱いされるのを嫌がる」「周囲に勧められても補聴器を頑なに拒否する」「歩くのが不自由でも、杖は使わない」…高齢の親や親戚を持つ人なら、心当たりがあるのではないだろうか。「本当、頑固なんだから」のひと言で片づけ、彼らの思いに耳を傾けてこなかった人も多いかもしれない。
94才にしてもなお舞台に立ち続ける漫才師・内海桂子さんの主張は明快だ。
「杖をつくのは姿勢が悪くなるから嫌い。傘ならいいけど。補聴器も要らない。体に不要なものをつけるのが嫌なの。電車で席を譲られるのも、私が芸人だからでしょ。ババアだから譲ってくれるんじゃないと思う」
取材に同席していた25才年下の夫でマネジャーの成田常也さんが苦笑いして、「高齢者だから譲ってくれるんですよ」と言っても、内海さんは頑として聞き入れない。
「もしそういうことだとしたら、私は『どうもありがとう』と言って、他のお年寄りがいたら、その人に座ってもらいます」(内海さん)
御年94才の内海さんに席を譲られた人は、相当恐縮するに違いない…。さらに「どんな時に老いを感じるか」と質問すると、内海さんはきっぱり言い切った。
「感じることはありませんね。年寄り扱いで大事にされるから、年齢を意識しちゃうのよ。楽な方へ楽な方へと植えつけられて、老人っぽくしなきゃと思っちゃう。だけど、私は働かないと、食えないんだから」
そんな内海さんも、年齢とともに寂しさを感じることが多くなったという。
「同世代の人がいなくなっちゃったでしょ。同じように浅草でやってきた芸人さんたちが死んでしまったり。同じ時代を生きて、一緒に思い出を語れる人がいないというのは、本当に寂しいですよ」
※女性セブン2016年10月20日号