以前に比べるとペットの平均寿命もグンと伸び、高齢のペットも増えている。そんななか、39才パート勤務の女性Aさんから、こんなお悩みが届いた。
「わが家の愛犬はミニチュアダックスフンドで、現在16才。目が悪くなったせいか、じっとしていることが多いのですが、夜になると徘徊したり吠えたりします。犬も認知症になるのでしょうか?」
そんなお悩みを、白金高輪動物病院総院長で、小学館ジュニア文庫『動物たちのお医者さん』の構成ほか、著書も多数ある佐藤貴紀さんが解決する。
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ペットフード協会の最新の調査によると、犬の平均寿命は14.85才、猫は15.75才で、ともに過去最高を記録しました。医療技術の進歩やペットフードの改良などにより、ペットの寿命は年々延びています。動物病院でも来院患者の約半数が“高齢ペット(10才以上の子)”で、病院によっては、「高齢科」を設けるほど“ペットの老い”は大きな問題となっています。
今回の症状からすると「認知症」の可能性が高いと思われます。一般的な認知症の行動としては、
【1】自分で狭いところに入ったのに、自力で出てこられない(後ろに下がれない)。
【2】壁に向かって吠える。
【3】壁に沿ってまわる。
【4】食事を食べたのに、何度も要求する――などです。
ただし、これらの行動をしたからといって、認知症だと決めつけず、病気の可能性も視野に入れてみてください。
というのも、「最近じっとしていることが多くなった」ことの原因としては、椎間板ヘルニアなどの脊椎の異常や、股関節などの関節の異常、内臓疾患による体調不良なども考えられるからです。
また、「徘徊したり、無駄吠えする」ことに関しても、脳腫瘍などの可能性も否定できません。今までにない行動が目につくようになったら、老犬だから仕方ないなどと放置せず、かかりつけ医で検査をすることをおすすめします。
認知症と判断された場合は、介護が必要になります。最近は見た目もかわいらしいおむつや歩行補助グッズも多く出ていますので、活用するのも手でしょう。また、徘徊や視力低下が始まった子には、けがを防止するために、家具の角をガードするクッションなどを取りつけてあげましょう。
老いは自然現象であり仕方がないことです。認知症の進行を抑える方法があるとしたら、それは、飼い主さんによる、“愛情深いお世話”だと思います。お世話とは、時間をたくさん使って、いっぱい遊んであげることです。一緒に楽しく遊ぶことで脳が刺激されるからです。
人間同様、ペットたちも必ず年をとります。最後まで一緒に暮らせるよういっぱいの愛情で接してあげてください。
※女性セブン2016年10月20日号