尖閣諸島周辺に、姿を現す中国漁船に国防関係者が警戒心を募らせている。漁民を装った中国の武装民兵が包囲しているからだ。この状況を、アメリカはどう見ているのか。産経新聞ワシントン駐在客員特派員の古森義久氏が、アメリカの専門家が分析する「中国の狙い」をリポートする。
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中国の実際の尖閣攻略作戦について、ワシントンの民間の中国軍事研究機関「国際評価戦略研究センター」の主任研究員リチャード・フィッシャー氏の予測がより具体的で詳細だった。
「中国は日本の尖閣防衛の能力や意思が弱く、アメリカの支援も疑問だと判断すれば、必ず攻撃をかけてくる。その方法は民兵『漁船』を利用した上で、ヘリコプター、ホバークラフト、潜水艦のいずれかを使っての奇襲上陸の可能性が高い」
同氏は、まず中国の民兵が尖閣潜入上陸を試みるケースが考えられるが、その場合、ヘリやホバークラフトで投入される中国軍部隊との一体化の公算が大きいという。
「中国軍は浙江省の南ジ列島にヘリ発着を主目的とする新軍事基地の建設を始めた。この基地は尖閣から約300kmで、中国軍新鋭ヘリのZ─8BやZ18─Aは約900kmも飛べるから尖閣急襲目的にかなう。
中国海軍はロシアとウクライナから高速の大型ホバークラフト4隻をすでに購入し、東シナ海にも配備している。艦底部に空気を吸い込み浮上して走るホバークラフトは水陸両用の揚陸艦艇として尖閣諸島への上陸にも機能を発揮しうる」
フィッシャー氏は潜水艦からの兵員の奇襲上陸も可能だと述べた。こうした手段で尖閣に投入された戦闘要員を「漁船」民兵が支援することにもなるという。
となると、現在の尖閣事態はすでに日本にとって「いまそこにある危機」である。日本国土の一部を武力で奪われる瀬戸際というわけだ。
※SAPIO2016年11月号