今からさかのぼること5か月前。5月19日、情報番組『バイキング』(フジテレビ系)のオープニングで、華やかな赤いワンピース姿のフリーアナウンサー、小林麻耶(37才)は、いつも通りの笑顔を見せていた。しかし、その手はひざの上で硬く組まれ、しだいに顔がこわばってゆく。そして番組が中盤に差し掛かったCM明け、麻耶の姿は番組から消えていた。体調不良で病院に緊急搬送されたのだ。
歌舞伎俳優の市川海老蔵(38才)が会見で、妻の小林麻央(34才)のがんを公表したのはその20日後のこと。海老蔵はブログで「すべてを受け止める。のですが、稀に現実逃避もしたくなる日もあるのかも」とつらい胸の内を打ち明けた。
苦しみを抱えているのは闘病する患者本人だけではない。「家族は第2の患者」──麻耶もそれを実感している。
「テレビに出ることで病室で少しでも笑ってもらえたら…」「仕事をしていることで心配かけずにすむように…」「私は大丈夫。だって、妹はすぐによくなるから!」──そう思っていたものの、この10月で麻央の闘病は2年となった。いまだ麻耶はアナウンサーの仕事を休業し、復帰の目処も立っていない。
がん患者の家族には、約30%になんらかの抑うつ、不安といった精神医学的な疾患があるとわかっている。
麻耶も、一時期は電車やタクシー、エレベーターに乗ることができず、人ごみの中に出て行くこともできない状態だった。少し体調が戻って来た今でも気持ちを落ち着かせるためのアロマオイルを染み込ませたハンカチと、人ごみを視界から遮断するためのサングラスは手放せない。
《食べたいものが食べられる。飲みたいものが飲める。私の生活では当たり前のようになっていたことが全く、当たり前ではないことを実感しました》
一方、常に前向きな姿勢を見せる海老蔵も苦しみを抱える。麻央の再検査を振り返って《私もはっきり覚えてます。あの頃のこと、私ももっと麻央の話を聞けばよかった。繰り返します繰り返しますが時はもどらない》と悔やむ。そして、同様に麻耶も《あの時、半年後の検査のことをもっともっと真剣に捉えられていれば…悔やんでも悔やみきれません》と自分を責める。
埼玉医科大学国際医療センター精神腫瘍科教授の大西秀樹さんは「うつ状態になる家族は多く、患者より重症の場合もある」と指摘する。
「“気づいてあげられなかった”とか“もっといい食事をつくればよかった”などと自分を責めて後悔する人は多いです。がん患者の配偶者と子供の4人に1人に、抑うつ状態あるいは不安が見られます。家族にもメンタルケアが必要なのです」
※女性セブン2016年10月27日号