秋は夏に比べて発汗量が減るため、その分、尿の量が増えてトイレが近くなったと感じやすくなる。だが、一般的に、健康な人は1日の排尿回数は8回未満が正常とされており、就寝中に2回以上排尿する人は、夜間頻尿の可能性が高いと、順天堂大学泌尿器科医の高澤直子さんは言う。
「加齢とともに体の機能は衰え、50才を過ぎれば夜中に1回はトイレに起きるもの。ただ、回数が多いと眠りが浅くなり、日中の集中力や記憶力が低下します。高齢の場合、集中力散漫が原因で転倒して骨折し、寝たきりから肺炎になることもあるのです」
就寝中は体の機能が休止状態な上、水分摂取量も少ないので、尿は昼間よりも少ないはず。夜間に頻繁に尿意があるなら、膀胱の機能以外にも腎臓や心臓などに深刻な問題が隠れていることもある。
たとえ重大な病気でなくても、夜間頻尿の状態が繰り返されれば睡眠不足で代謝が落ち、肥満になるなど影響は多方面に及ぶので注意が必要だ。
では、そもそも尿意はどんな仕組みで起こるのか?
「膀胱に尿がたまると脳に伝わり、尿意を感じます。尿意を受けて脳が出す排尿の指令は、脊髄を通り膀胱と尿道に伝えられ、膀胱の排尿筋が収縮し、排尿へ。神経の病気などが原因でこの流れが妨げられると、頻尿になることがあります。
また、心臓病の場合、心臓のポンプ機能の低下から体内の余分な水分が膀胱にたまります。特に就寝時は下半身が心臓と同じ高さになることで余分な水分を排泄する働きが強くなり、尿が増え、頻尿になることもあります」(高澤さん)
頻尿の原因はさまざまで、複数絡み合っている場合もあるが、特に女性の頻尿には骨盤底筋が深く関係しているという。LUNA骨盤底トータルサポートクリニック理事長で医師の関口由紀さんは言う。
「骨盤底筋は尿を我慢する時に収縮し、その刺激が脊髄内の排尿中枢に伝わり、膀胱をリラックスさせ、膀胱の収縮を抑えて尿を蓄えます。ところが、出産や慢性的な便秘、咳、重い荷物を持ったり、猫背や反り腰などで骨盤底筋が傷むと、その作用は発揮されにくくなります。臓器を支える力もなくなり、膀胱が垂れ下がって変形し少量でも尿意に敏感になります。尿道は締まりにくくなるので、尿漏れを伴うこともあるのです」
頻尿は骨盤底筋が緩み、膀胱が知覚過敏になって急な尿意に我慢が困難な“過活動膀胱”の主要な症状のひとつ。頻尿の人は膀胱に尿をためる時間が短いので、多少我慢しても膀胱炎にはならない。改善するためには、エクササイズなどで骨盤底筋を鍛え、普段より30分でも長く尿意を我慢する訓練を。
頻尿は外出を控えるなど、精神的にも影響がある。まずは自分で改善法を試してみて。
※女性セブン10月27日号