台湾で独立傾向が強い民主進歩党(民進党)政権が今年5月に誕生して以来、台湾を訪れる中国人観光客数が激減している。今年10月1日から9日までの中国の国慶節(建国記念日)の大型連休中の中国人観光客はわずかに7915人で、昨年の約9万人に比べて、11分の1にまで激減していることが分かった。
また、1日の中国人観光客数もかつては1万人以上の時もあったが、今年の国慶節期間中でも最も中国人観光客数が少なかった日は499人と20分の1まで落ち込んでいたことが判明した。「中国時報」など台湾メディアが報じた。
今年の国慶節の連休期間中、中国内の観光客は前年比12%増の5億9300万人で、観光収入は同14.4%増の4822億元(1元=15.5円)だった。香港、台湾、マカオを含めた海外諸国・地域に出かけた中国人観光客は139万9000人で、1日平均で約20万人だが、台湾には8000人にも達しなかった。
このため、台湾南部の嘉義市ではすでに廃業に追い込まれるレストランやホテル、観光バス会社やお土産物品店なども出ている。同市の蕭淑麗・市議会議長は「中国人観光客が激減したことで、観光産業が存亡の危機に瀕している」などと述べて、台湾当局に対策を求める議案を提出した。
台湾観光局によると、今年8月の中国人観光客は前年比32.41%減の24万9000人で、ツアー客だけの場合は同54.96%の減少を記録した。日本や韓国からの観光客は増えているが、台湾を訪問した観光客数全体では同3.44%減。8月の観光客が減少するのは2004年以来初めて。
これは中国政府が独立機運の強い蔡英文政権が誕生したことで、台湾との関係を見直していることが背景にある。中国内の観光業者も「自主規制」をして、台湾向け観光ツアーの販売を自粛していることが影響しているとみられる。このため、台湾の観光業者ら約1万人が9月12日、台北市内でデモを行うなど、蔡政権への不満を強めている。
蔡政権は逆に「危機を転機に」と呼びかけ、東南アジアなど中国以外からの観光客誘致に力を入れており、8月にはタイとブルネイからの査証(ビザ)なし訪問を試験的に始めた。この一方で、観光業界に300億台湾ドル(約1000億円)の優先融資枠を用意し、幅広く観光客の誘致に取り組むよう求めているものの、いまのところ目に見える形での成果は生まれていないようだ。