カリスマFXトレーダー・羊飼い氏が、外為市場の旬な話題をウォッチする連載「FXトレンドフォーキャスト」。ここではFX口座で外貨を保有するメリットについて、羊飼い氏が解説する。
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差益を取りに行くばかりが外貨投資ではない。実際、羊飼いも日々売買を繰り返すFX口座とは別に、外貨預金的に複数の外貨を中長期保有している。資産を日本円だけで持つのはリスクが高いと考え、通貨を分散しているのだ。
相場の大きなトレンドの変化を感じた時には一時的に日本円に戻すこともあるが、あくまで資産分散が目的なので基本的にはほったらかしにしている。当然、レバレッジはかけていないので、リスクは最低限に抑えられている。
FX口座でも、レバレッジをかけなければ外貨預金と同じリスクで外貨を保有することが可能だ。資産分散を目的に高金利のメリットを享受しながら保有するなら、FX口座は外貨預金より有利な点が多い。
どの通貨ペアにもいえることだが、外貨預金への預入時に日本円から外貨に変える際の為替手数料よりも、FXのスプレッドのほうが圧倒的にコストは低い。また、普通外貨預金より金利の高い外貨定期預金だと、満期までは原則解約できないのに対し、FXなら毎日日割りでスワップ金利(取引する通貨間の金利差)を受け取りながらいつでも決済ができる。通貨によっては外貨を現金で受け取る「現受けサービス」を提供しているFX会社もあり、使い勝手も外貨預金と遜色ない。
例えば、高金利通貨であれば、トルコリラと南アフリカランドを扱う金融機関は多くはないが、FX会社なら外為どっとコムとセントラル短資FXなどで両通貨を取引できる。外貨預金はトルコリラなら新生銀行と大和証券・大和ネクスト銀行、南アランドは新生銀行、楽天銀行、ソニー銀行などで取り扱いがある。
短期的にはトルコや南アフリカはアメリカの利上げによる資金流出の心配が大きいが、ここが底だと考える投資家や、より長期的な視野で両国の経済成長を期待するなら、FX口座でリラやランドを保有する方法は選択肢のひとつではある。
この場合、くれぐれもレバレッジを高くしすぎないことが重要だ。スワップ狙いの投資で最も犯しやすい失敗は、高金利に気を取られて安易に高レバレッジでポジションを取ってしまうことだからだ。FXではなく有利な外貨預金だと割り切って、できればレバレッジをかけずに、かける場合でも3倍を限度にしたい。
世界的な低金利が続く中、高金利通貨のスワップ狙い投資の難易度は上がっているが、こうした状況は永遠に続くわけではない。
アメリカの利上げがある程度の水準まで進行すれば、2000年代半ばのように米ドル円でもスワップ狙いの投資ができる時期がやってくるだろう。このような局面であれば、さらに金利の高い新興国通貨のレートも比較的安定し、高いスワップ金利をコツコツと積み重ねる投資もしやすくなるはずだ。かくいう羊飼い自身も、かつては豪ドルでのスワップ収入で生活することを夢見て「羊飼い」と名乗り始めたほどハマっていた時期がある。
スワップ狙いだけでなく、差益狙いのトレーダーにとっても当面は厳しい市場環境が続きそうだ。こうした時期は無理をせず、市場の動きをしっかり観察しながらチャンスに備えよう。
※マネーポスト2016年秋号