テレビはワイドショーも報道番組も連日、“小池劇場”ばかり。新聞を開いても「豊洲」の見出しが躍らない日はない。だが、それらの一つひとつを検証してみると、建物の柱が傾いていた、地下水から基準値以上のベンゼン検出(ただし排水基準は満たしている)、石原慎太郎氏が調査協力拒否など、誤報から訂正、を繰り返している。これほどまでに訂正が続くのは珍しい。背景にあるのは視聴率や部数競争だけではない。
フジテレビは舛添要一・前都知事のスキャンダル追及の先頭に立ち、小池氏が知事になると一転、今度は豊洲問題追及で小池応援報道に走っている。
「社運を賭けてカジノ構想を推進してきたフジにとって、『東京にカジノはいらない』という舛添氏は邪魔な存在だった。そこでカジノ容認派の小池知事を応援することで頓挫しかけたお台場カジノを復活させたいという思惑が見え見え」(元民放報道幹部)
読売グループには築28年で老朽化が目立ってきた東京ドームに代わる巨人の本拠地問題がある。
有力視されているのが築地市場の跡地(約23ヘクタール。東京ドーム5個分)への野球場建設計画だ。地元の矢田美英・中央区長は築地の跡地について「野球場やサッカー場もいい」と発言しており、スポーツ報知は今年1月、「築地市場跡地に“スタジアム”建設案……五輪後に再開発へ」の見出しで大手不動産会社が4万人収容の野球場(サッカー場併設)と商業施設を建設する計画を進めていることをスクープした。
読売グループにとって、「築地スタジアム」の実現には小池知事の理解が欠かせない。
一方、築地に本社がある朝日にすれば、目と鼻の先に読売巨人軍の本拠地ができることなど容認できないことは想像に難くない。
「テレ朝が豊洲市場の危険性を煽っているのも、築地の移転を阻止したいという思惑があるとみればよくわかる」(同前)
三者三様の打算が重なって、報道合戦につながっているという見方なのだ。漫画家でワイドショーウォッチャーとしても知られるやくみつる氏は別の視点からこう疑問を提起する。
「多くのメディアが小池知事の勝ち馬に乗っている印象が強いが、それにしても報道が豊洲問題に偏りすぎ。本来、東京五輪の方が悪の温床で問題は大きいはずなのに、メディアは五輪の問題をなかなか正面から取り上げない」
もっともな疑問である。しかし、朝日、読売、毎日、日経は日本オリンピック委員会に協賛金を支払う東京五輪オフィシャルパートナーだという事実がある。豊洲移転問題も、五輪問題も、大メディアは打算ばかりといわれても仕方がないのでは。
※週刊ポスト2016年10月28日号