広島カープが25年ぶりのリーグ優勝を飾った。かつての鯉戦士たちは、その姿をどのような思いで見つめたのか? 第2の人生を歩む往年の選手を訪ねた。
2002年に13勝を挙げるなど低迷期のチームを支えた長谷川昌幸(1996年~2010年)は25年ぶりの胴上げをどう感じていたのか。
「最初は見ないつもりでした。それは……複雑な気持ちもありますから。一緒にやっていた選手が優勝を体験するわけですから……。でもやっぱり、テレビを点けてしまいました」
入団会見で「メジャーに行きたい」と宣言したり、金髪にしてヒゲを生やしたりとグラウンド外でも話題をさらい、首脳陣から「チャラチャラするな」と叱られたり、先輩に「だからおまえは……」と苦言を呈された。
「プレーで結果を出してナンボの世界。自分にプレッシャーをかける意味で、あえて奇抜な格好をしていました」
2011年に引退後、もう野球とは関わりたくないと、輸入時計ブランドの代理店を立ち上げるも、約4年でピリオドを打つ。その後、生命保険会社の営業職に就いたものの、性格に合わなかった。
「あまり人に強く勧められるタイプじゃないし、友達に電話するだけで勧誘と思われるのが嫌でした。将来のビジョンも全くなく、しんどかったですね」
悩みを抱えていた昨年の夏、野球教室の話が舞い込んだ。その縁から、現在は『スポーツオーソリティ』の広島府中店で社員として働いている。週3~4日は店頭に立ち、月2回ほど野球教室で教えている。
「引退から4年以上経って、野球への気持ちが再び湧いてきた。子供に教えるのがすごく楽しかったし、今は時計や保険ではなく野球用具の説明ができる。引退後、今が一番充実しています」
(敬称略)
撮影■藤岡雅樹 取材・文■岡野誠
※週刊ポスト2016年10月28日号