日本の“クォリティ・ペーパー”といわれてきた朝日新聞が相次いだ不祥事などによる部数減に苦しんでいる。今回、本誌はその苦しい台所事情の一端を示す社外秘文書を独自に入手した。そこには「3年で500億円減収」の懸念が記されていた。衝撃的ともいえる数字を挙げながら社員の“理解”を強いる姿勢に、社内では動揺が広がっている。
渡辺雅隆・社長が「100億円規模の人件費カット」を柱とする中期経営計画を打ち出したのは今年1月だが、最大15%の給与カットが実際に始まるのは来年4月からだ。今年は4月から地域面などのレイアウトや校閲を担当する部門を分社化し、そこでの新規採用の待遇を抑える合理化策に着手している。今年初めに中期経営計画を明らかにした際、渡辺社長はこう宣言していた。
「(単体の売上高は)5年後には3000億円にまで増やします。(中略)新聞事業だけに頼り切った経営から脱却し、複数の柱を持つ企業へと収益構造を変えていきます」
社長が“新たな柱”の中でとりわけ強調したのは、“副業”としての存在感を増す不動産業だった。
最大プロジェクトは、大阪・中之島に建設中の、ビルとしては日本最高峰約200メートルの高さとなるツインタワー。2012年に完成した1棟目の「中之島フェスティバルタワー」(地上39階、地下3階)には朝日新聞大阪本社や2700席のコンサートホールが入り、テナント契約も好調だ。
来年完成する2棟目の西棟(地上41階、地下4階)の上層階には、米国の最高級ホテル「コンラッド」が入居するほか、朝日創業者の村山龍平のコレクションを所蔵する「香雪美術館」(兵庫・神戸市)の分館も置かれる予定となっている。
「敷地は元の旧大阪本社ビル(10階建て)などの跡地だが、小泉純一郎内閣時代の都市再生特区に指定されたことで、容積率の大幅拡大が可能になり資産価値が大幅に膨れ上がった」(地元不動産業者)
2015年度の朝日新聞社(連結)の賃貸事業は売上高170億円。利益は41億円(利益率24%)を叩き出し、前年比1割超の増益を記録した。これは新聞出版事業(連結)の利益率1.7%を大きく上回っている。