ラーメン、もつ鍋、どんたく、山笠、ホークスにタモリ。名物や名産、輩出有名人に事欠かず、博多っ子たちに地元の魅力を語らせればキリがない。だが、キリがないのも困りもの。批判さえも許さないほどの郷土愛は、「博多ぎらい」を生み出すほどだ。そうした風潮を客観視する博多っ子もいる。福岡市出身の漫画家、小林よしのり氏はその一人だ。
「わしはいつも博多弁で話すんだけど、博多の人間は博多弁を恥ずかしいと思ってないんだろうね、誇りがあるから。俺が俺がという我が強いよね。大して面白くもないのにべらべら話したがるし、目立ちたがる。
ちなみに、クリスタルキングの『大都会』って東京じゃなく博多のことを歌ったものだからね(※)。だから博多の人間は、ここが一番の大都会ぐらいに思ってるのよ」
【※クリスタルキングが長崎県の佐世保から博多に活動拠点を移した当時のことを歌っている。1979年に発売され大ヒットした】
そんな“大都会意識”から、博多っ子は九州の他県出身者を見下す傾向が強い。
「スターバックスでも何でも、九州で最初にできるのは博多だから、『あのラテ美味しいよね? あれ、知らない? 宮崎にはスタバないもんね』とか、いちいち他県をバカにする。それに博多の人間は他県でもどこでも『博多人会』とかつくってまとまりたがるんだけど、そんなに博多が好きなら博多に戻れば?」(宮崎県民49歳)
「福岡の予備校に通っていた頃、出身地を言い合った瞬間、博多出身者が上に立つ。『なんだ佐賀か』って鼻で笑われたこともあります。しかも『ここには九州の英知が集まっているんだよ』って言うんだけど、いやお前、予備校生だろうと(笑い)」(佐賀県民36歳)
「『博多美人』とか威張っているけど、九州の美女が集まっているだけ。お前たちが生み出したわけじゃない」(大分県民40歳)
漫才コンビ・ナイツの塙宣之は、千葉で幼少期を過ごした後、佐賀県に引っ越した。大ヒットしたコミックソング「佐賀県」でおなじみの芸人・はなわの実弟でもある。
「高校の頃、佐賀出身の友人と福岡吉本が主催する漫才大会に出て、佐賀弁で漫才したら優勝したんですが、今思えば田舎者の言葉だって笑われてたのかもしれません(笑い)。で、その友人は福岡吉本に入ったんですが、僕は福岡で一番になっても意味がないからと断わって東京に出てきた。だって、僕はもともと千葉にいたから、博多にはなんでもあって便利に暮らせると言ったって、東京に比べたら中途半端じゃないですか(笑い)」
ある意味、一番痛烈な博多への皮肉かもしれない。
※週刊ポスト2016年10月28日号