今シーズン、11年ぶりのAクラスに入り、初のクライマックスシリーズ(以下CS)進出を果たした横浜DeNAベイスターズ。CSファーストステージでは2位の巨人を破り、ファイナルステージにも進出した。
本塁打、打点王の2冠王を獲得した筒香嘉智や抑えの切り札である山崎康晃を育て上げた中畑清前監督の功績にも注目が集まっているが、就任1年目でチームをCSに導いたアレックス・ラミレス監督の手腕も当然ながら見逃せない。野球担当記者が語る。
「ラミレス監督は、選手と積極的にコミュニケーションを取り、一切選手を責めないのが特徴的です。決して結果論でモノを言わない点も大きかった。ラミレス監督はキャンプから一貫して『ファーストストライクを打て』というチーム方針を掲げてきました。しかし、春先は打線がまるで機能せず、早打ちし過ぎだと批判された。普通であれば、方針を転換してもおかしくないのですが、ラミレス監督は一切曲げなかった。状態が良くない時でも一貫性を保ったことで、選手からの信頼も勝ち得たのでしょう」
3、4月は9勝18敗2分と大きく負け越したが、5月は16勝7敗1分と持ち直した。すると、『早打ちし過ぎ』という批判は止まった。
「また、決して自分の色を全面に押し出そうとしなかったことも大きい。普通、監督に就任すると、前任者とは違う野球を標榜し、自分の見出した選手を起用したくなるものです。しかし、ラミレス監督は中畑前監督が起用し続けた桑原将志や倉本寿彦といった若手をそのままレギュラーに育てた。余計なプライドを持たず、選手を起用した点も評価されていいでしょう」(同前)
今年の新たな戦力となったのは、正捕手に定着した戸柱恭孝と、先発の一角に食い込み8勝を挙げた今永昇太。2人はいずれも新人である。
「リリーフ陣も役割分担がハッキリしていたため、ブルペンで調整しやすかった。田中健二朗や須田幸太、三上朋也といった中継ぎ陣が1年通して活躍できたのは明確なベンチワークがあったから」(同前)
ラミレス監督の手腕で今季はCS出場を果たしたわけだが、そうなるとファンは来季19年ぶりの優勝をも期待する。
「ラミレス監督は『今の戦力では3位争いはできるが、優勝争いはできない』と明確に口にした。今年の頭脳明晰な采配を見ても、フロントはラミレス監督の戦力分析に納得せざるを得ない。監督の希望通りの補強ができれば、来季は十分、優勝争いに加われるでしょう」(同前)
撮影■山崎力夫