1979年の旗揚げから独自の笑いを創造し、毎年、老若男女を抱腹絶倒させてきた劇団スーパー・エキセントリック・シアター(以下SET)の新作『土九六村へようこそ』が、10月21日から幕を開ける。結成37年目を迎えたSETが魅せる“最新の笑い”とは…? 緊張と爆笑の稽古場に、座長の三宅裕司と無二の相方・小倉久寛を訪ねた。
音楽とダンスをふんだんに盛り込み、ドッと客席を沸かせたかと思うと、しんみり涙を誘う。また、ピリリと鋭い社会風刺を織り込むのも、SETの舞台の特徴だ。
三宅:旗揚げした頃は、実は深刻な社会的テーマを笑いのオブラートで包んでラストまでお客さんをぐんぐん引っ張り、見終わった後で「なるほど! スゴイことを発信していたんだ」と唸うならせるような芝居を目指していました。今回の芝居は、まさにその原点に戻った感じです。“ザ・SET”ですね。
小倉:ただ、“古臭い笑い”という意味じゃないですよ。三宅さんの笑いは時代やはやりで変わるものじゃない。人間の悲しみや失敗や、恋の中にあるおかしさを演じるから、いつの時代も普遍なんです。たぶん、旗揚げ初公演の芝居を今やっても大爆笑だと思う。
三宅:面白いキャラクターを演じる芸とか、芸人の素顔を引き出す、体当たり芸のような“今のお笑い”も面白いんですよ、たしかに。でもぼくがやりたい笑いは、面白く練り上げられたストーリーやせりふを、真剣に演じて作り上げていく笑いなんです。
小倉:そうそう、そういえば、初めて舞台で三宅さんを見たときは、若くてカッコよくて、お笑いとは無縁の風体なわけですよ。それなのに、三宅さんが何かぽっと言うだけで、お客さんがドカンドカン笑う。それを見てぼくは、三宅さんについて行くことを決心したんです。
三宅:いやいや、小倉のほうがすごい~(笑い)。生まれついての喜劇役者。初めて会った時は、劇団の女優を決死の覚悟で連れ戻しに来た父親かと思った(笑い)。
小倉:「お客さんをいじらないこと、下ネタ、はやりのキーワードを使う時事ネタを使わない」が、三宅さんの舞台ルール。なぜなら、そういう作品は古典として残らないと。
三宅:…申し訳ない。今回ほんの少しだけ入れちゃいました(笑い)。世の中であまりに面白いことがいろいろ起きるもんだから知らんぷりできなくて…。初日までにカットになっているかもしれませんが。ちょうど(前・東京都知事の)舛添さんが辞める頃に台本を練っていたこともあり、そのあたりもどうぞお楽しみに!
※女性セブン2016年11月3日号