同じ専門の医師から「3時間かかる手術を20分で完璧にこなす」と称賛される内視鏡手術の名医がいる。NTT東日本関東病院内視鏡部部長の大圃研氏だ。
パーマ頭にヒゲ面という医者らしからぬ風貌だが、内視鏡を操作する手の動きはまさに“超絶技巧”で、素人目にもすごいとわかる。
大圃氏は食道・胃・大腸まですべての消化管の早期がんに対する内視鏡治療であるESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)治療を独学で習得し、大圃流とも呼ばれる独自のスタイルを確立した。
「家業は3代続く開業医。僕だけが内科系で他は全員外科系です。内科ながら外科的な要素もある内視鏡を選んだのは、そういった環境も影響しているかもしれません」(大圃氏)
日本大学医学部卒業後、大学病院の医局には入らず、非常勤の医師として内視鏡の腕を磨いた。
「不安定な身分で待遇も悪かったが、ものは考え様。だからこそ自由に内視鏡の手技を追求できた面もある。結果的に内視鏡を極めるにはいい環境だった」(大圃氏)
その技術と熱意で患者の信頼を集め、今は1日に20通を超える紹介状が届く。手術のために国内外の病院を飛び回る傍ら、内視鏡部門のトップとして若い医師たちの指導に当たる日々だ。
「ひとりの医師が救える患者の数はたかが知れている。多くの高い技術を持った医師を育てることが大切。持てる技術は惜しみなく伝授しています」(大圃氏)
全国に30万人以上もいる医師のなかで、「名医」と呼ばれるのはほんのひと握りにすぎない。名医になるための条件とは何なのか。