今月中旬、中国国防省や中央軍事委員会など軍中枢機関が入る北京市中心部のビル「八一大楼」周辺で、退役軍人による大規模な抗議活動が行われた。報道では1000人程度が参加したとされるが、実際の参加者は1万人以上であることが分かった。
これらの退役軍人は中国全土20数都市から集まっており、各省や自治区、直轄市の退役軍人連合会を通じて、組織的に招集されており、今後も軍縮による30万人の退役軍人の待遇問題をめぐって、習近平指導部の根幹を脅かす存在になりそうだ。
米政府系放送局「自由アジア放送(RFA)」によると、退役軍人は今月11日早朝から一昼夜を経た翌日早朝まで歩道などに座り込み、中国の国旗を手にして国歌や軍歌を歌うなどして、極めて統制がとれた抗議をしていた。この間、退役軍事らは入れ代わり立ち代わりで1万人以上が抗議集会に参加したという。
これに対して、中国人民解放軍の最高指導者でもある習近平・国家主席は、習氏の側近で中央軍事委員会弁公庁の秦生祥主任を退役軍人との交渉の最高責任者に就かせ、退役軍人を「怒らせたりしないように、礼儀正しく、丁重に対応せよ」などとの指示を出した。さらに、孟建柱・党中央政法委員会書記(党政治局員)や人民解放軍総政治部の少将らに退役軍人側の責任者との交渉に当たらせたという。
退役軍人らは除隊後、軍からの一時金を使い果たし、再就職も斡旋されないことに不満を抱き決起したという。全国の退役軍人会が連携して、北京での大規模な抗議デモを起こしたようだ。このため、各省政府の省長も説得に駆けつけ、彼らの再就職先を斡旋することで合意したため、退役軍人らは当局が用意した大型バスに乗り込み、そのまま地元に帰ったとみられる。
習近平氏は昨年9月の大規模な軍事パレードの祝賀式典で、今後30万人の軍縮や大規模な機構改革などの軍事改革を実行すると明言していた。それだけに、30万人の退役軍人の退職金や年金、転職先の斡旋など対応を間違えると、彼らを敵に回しかねず、政治的な手腕が試されそうだ。
中国人民解放軍機関紙「解放軍報」はデモ収束後の14日付の紙面で、軍内には改革に反対する「敵対勢力の存在にはこと欠かない」と警戒を強めている。その一方、これらの「敵対勢力」が「退役軍人の手当削減など根拠のないあらゆる話をネット上で拡散させている」などと強く批判しており、今後は軍内外の動きに目を光らせ、「敵対勢力」の摘発に力を入れるとみられる。