「今回の『拓人』は今までになく、難しい役でした」――公開中の主演映画『何者』の撮影を振り返る、佐藤健(27才)。就活生のリアルな生態を描く同作で演じたのは、常に周囲を俯瞰している“冷静分析系男子”の大学生。一歩引いてクールに仲間を眺め、ちょっとシニカルな目線を持ち合わせている。
「中学の頃、クラスに人気者の男子がいたんです。他のみんなは無邪気に彼の周りにいたけど、『おれはできない』って思っている方でした。拓人は、ブログなどで夢の途中経過を熱く語る友人を『頑張っているね』じゃなく『イタい』と嘲笑したりして――自分も、やるべきことをやり遂げてから口にしたいタイプなので、そのあたりのスタンスは自分とも近いのかな?と思いました。
ただ、思考が共感できることと、人間として似ているかは別。拓人という別人格になるために悩んで辿り着いたのが、原作者で友人の朝井リョウに気持ちを近づけることでした。彼ならこんな時にどうするか、その感覚を拠り所に演じたんです」(佐藤・以下「」内同)
誰よりも状況を冷静に見極める拓人だが、物語が進むにつれ自身も見透かされていたと気づくシーンで佐藤が考えたこととは。
「拓人が弱点をつかれるシーンは心が痛かったですね。でもぼく自身なら、きっと動じない。いろいろ言われることはあっても、自分はやるべきことをやっているという自負があるので、ダメージはくらわないんです」
就活を通して自分が「何者」であるかを模索する今作だが、実生活で佐藤が「何者!?」と感じるのはどんな人物なのか。
「単純に『え、何者!?』と思ったのは、たまたまテレビを見ていて見かけたドラマのエキストラさん。男性のかたなのですが、謎にシャツがはだけていて露出度高めで。主人公の後ろにずっといるので、『よくあれでOK出たな』って(笑い)。すごい才能という意味ではメンタリストDaiGoさんです。フォークを曲げた時点でおかしいことになってるな、と。神がかりすぎて『何者!?』状態でしたね。『おまえ誰だ!?』って、今でも思いますもん。間違いなく衝撃的ランキング第1位です」
意外な例を挙げた佐藤。番組での共演をきっかけに一緒に食事に出かけるまで仲がよくなった。
「先日会った時には、いろいろな話をして、ペンの色を当てる心理ゲームをしました。何色かある中からぼくが好きな色を選んでそれを彼が当てるのですが、何度やっても的中する。100回連続ぐらいで当てられて、意味がわからなくて。理屈を説明してもらうと『あぁ、なるほど…』とは思うけれど、もちろんぼくにはできない。意味がわかればわかるほど、『すごい!』と。彼はとんでもないです(笑い)」
瞳を輝かせて興奮を語る、そんな彼自身も誰かにとっての“何者!?”な存在でありたいという。
「作品を通じて、俳優としてのぼくにその感情を抱いてくださるかたがいたら本望ですね」
撮影■中村功
※女性セブン2016年11月3日号