ポストシーズンに入っても、日本ハム・大谷翔平の快進撃は止まらなかった。CSの対ソフトバンク初戦に先発して7回を1安打無失点に抑えると、10月16日の第5戦では9回のマウンドでプロ野球史上最速となる165キロを記録。パ・リーグ制覇を決めた。このシリーズでは“DH・大谷を敬遠して4番・中田翔(27)と勝負”という場面まであった。
「投手・大谷と打者・大谷のどちらが凄いかと聞かれたら、“どっちも凄い”と答えるしかない」
そう驚きの声をあげるのは来季から同じパ・リーグの楽天で投手巡回コーチに就任する杉本正氏だ。
「指の故障で投げられなかった2か月間は、打者としてチームに貢献。投手に復帰してからはソフトバンクとの直接対決で貴重な勝ち星を挙げた。僕は去年まで、大谷は投手に専念した方がいいと考えていたが、今年の活躍を見る限り、二刀流を認めざるを得ません。凄いの一言です」
大谷は今季、投げてはソフトバンク戦に2勝0敗、打者としては9本のホームランを放った。最大11.5ゲーム差をひっくり返した大逆転劇も、
「ソフトバンクからすれば“大谷ひとりにやられた”といっても過言ではない」(杉本氏)
と評されるほどだ。ヤクルト、巨人、阪神で4番を打った広澤克実氏は投手としてよりも、打者としての大谷の能力を評価する。
「165キロのストレートが脚光を浴びていますが、球速の割にバットに当てられています。質のいいストレートなら、140キロでも空振りは取れるはずですから、キレという意味ではまだ課題があるのでしょう。むしろ、150キロを超えるフォークは“超”がつく魔球です。絶対に打たれない。打つ方はもう、天才としかいいようがない。ケチのつけようがありません」(広澤氏)
撮影■山崎力夫
※週刊ポスト2016年11月4日号