スマートフォンが今や必需品となり、子を持つ親は「何歳からスマホを持たせるか」に頭を悩ませている。スマホをねだる子どもに対し、「条件付きでOKする」という方法は現実的な解決策だが、嫌がる娘のLINEを親が確認するのは法律に触れるのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
高校生の娘にせがまれ、LINEを週に1回、私が確認するという条件付きでスマホを購入しました。しかし、半年後に娘から親といえども、閲覧するのは犯罪だといわれ困惑しています。子供が成人するまでは親が確認するのは問題ないと思っていたのですが、この行為は法に触れることなのでしょうか。
【回答】
高校生の子供のしているLINE確認が問題になることはありません。高校生は未成年者であり、親権者である父母の親権に服さなければなりません。そして、親権者は子の監護及び教育をする権利を有するだけでなく、義務も負っています。子供に適正な教育を施し、保護育成を図るのは親としての義務であり、子が従わないときには子を懲戒することもできます。
このような親権の内容としての監護教育義務の履行については、児童福祉法で虐待が禁じられるなどの各種の規制がありますが、親権者はこれらに反しない限り、どのような程度方法で子の監護教育をするかの自由を有しています。
とはいえ、親権者がその監護教育の権利を不当に行使し、子の福祉を著しく害した場合には、親権の濫用になります。懲戒する権利があっても、社会通念上許容される限度を超えると親の行為が犯罪になり、処罰されることもありますし、子の権利を侵害した場合は、不法行為になります。これらの場合には親権の行使を一時停止され、親権を失うこともあります。
子の交友関係に気がかりなことがあれば、スマホなどを見ることが、その子の保護のために必要なことであり、濫用にはなりません。しかし、成長した娘さんが抵抗する気持ちは、あなたもわからないではないはず。興味本位ではないことを理解させることが大切です。
ところで、婚姻中の父母の場合は、父母二人が親権者であり、親権は父母が共同して行使することが定められています。ですから、奥さんと話し合い、協力して娘さんを説得するか、同性の立場で奥さんがLINEを確認するなどの方法もあるように思います。
ただ、選挙権年齢の18歳引き下げにともない18歳成人制が実現すると、高校3年生には親権が通用しなくなる場合も出てくるでしょう。
【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2016年11月4日号