ソビエト連邦が消滅してから25年が経つ。当然、徐々に社会主義や共産主義に対する関心が薄れていったのだが、最近は北朝鮮や中国に関するニュースが増えたことで、再び共産主義に興味を持つ若者が少なくないらしい。評論家の呉智英氏も、学生から共産主義のことがわかる本はないでしょうかと聞かれることが増えている。共産主義の魅力も弱点もわかる概説書を、呉氏が紹介する。
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最近、学生から「先生、共産主義の概説書のいい本はありませんか」と聞かれることがよくある。社会運動だの支那や北朝鮮の動向だのが報じられる割に、その根底にあるらしい共産主義が、真偽も含めて分かりにくいのだろう。
でも、概説書って……。日本共産党の出している共産主義入門のたぐいか。真逆!(「まさか」と正しく読んでね)。そんなもの読んだって無知の地獄へ真逆様だ(「まっさかさま」と正しく読んでね)。となると、そうだ、優れた反共主義者が書いた名著があった。
一つは、小泉信三『共産主義批判の常識』(1949年刊、後に文庫、全集)である。
私は1960年頃、中学生の時、父の本棚にこれを見つけて読んだ。そして、これを共産主義の入門書だと誤読した。『共産主義・批判の常識』だとしか思えなかったのだ。つまり、共産主義は社会批判の常識である、という本だと、愚かな中坊は思った。共産主義の弱点も指摘してあるけれど、なぜ共産主義が多くの人を魅了するのかについても詳論してある。後に再読してみると、序文にこうあった。
「これを読んでますます共産主義の確信を堅めたというものがあっても、それもやむを得ない」。
この度量と教養。感嘆した。