これまで1万世帯を超える家計を診断してきた「家計の見直し相談センター」の藤川太氏によれば、“マネー失敗者”たちの「しくじり」には共通のパターンがあるという。その1つが「過去にこだわって失敗」というもの。「これまで払ったお金がもったいない……」とこだわって、損失を拡大させてしまう失敗はよくあるケース。そんな失敗に陥った2人の例を、藤川氏が紹介する。
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【過去に加入した保険をどうしても解約できないEさん(女性・40代=当時)】
かつて国内大手生保で勧められるがままに加入した夫の生命保険を見直したいと相談にきたEさん。これまで支払った分と今後支払う予定の保険料を合わせると総額1200万円以上に上るため、「必要な保障に絞り込み単価の安い保険会社の商品に見直すことで、この先数百万円の節約につながる」とアドバイスしました。しかし、Eさんはまったく実行に移そうとしません。理由を聞いて唖然としました。
「解約しようと思ったんですが、今まで何百万円もかけてきたのがもったいない」
これが貯蓄性の高い保険であれば、まだわかります。しかし、Eさんの夫の保険はほとんどが「掛け捨て」タイプで、万が一亡くなったりしない限りは戻ってきません。それよりも今後払い続ける保険料の方がよほどもったいないのに、結局、Eさんは見直しを実践しようとしませんでした。
【塩漬けになった株をなかなか損切りできなかったFさん(女性・60代=当時)】
夫の退職金などを元手にした株式運用で1000万円以上の含み損を抱えた主婦のFさんが相談に訪れました。「株価5000円で買った株がいま2000円台に下がったままで“塩漬け”になっています。どうしたらいいでしょうか」といわれたので、「いったん売却して損切りしてもいいかもしれませんね」とお伝えしました。すると「それはもったいないので、株価が5000円まで戻ったら売ります」とおっしゃいます。
そこで「株価が下がったのは下がるだけの理由があったからです。いま手元に同じお金があったら、いろいろな選択肢があるなかでその株を買いますか?」と聞くと、「……いえ、買いません」とようやく理解してくれました。保有株を売って他の銘柄に乗り換えることを決意し、Fさんは塩漬け株の呪縛から逃れることができました。
【まとめ】
・過去のコストにこだわっても意味がないのに、もったいないから動けない。
・資産運用で最も大切なのは将来のお金を殖やす(もしくは将来の損失を抑える)こと。現状と将来を見通して、Fさんのようにコツをつかめば切り替えは可能。
※マネーポスト2016年秋号