「赤ワインにはポリフェノールが含まれ、健康にいい」といわれるが、その効果はいかほどか。
ポリフェノールとは、「たくさん(ポリ)のフェノール類」という意味だ。カテキンやアントシアニン、イソフラボンなどの総称で、抗酸化作用、血圧降下作用、殺菌作用、抗がん作用など、さまざまな作用があるとされている。
しかし、一方で赤ワインはアルコール度数が12%前後の酒である。ポリフェノールを摂れるからといって、酒を大量に飲むのはいいことなのか。
ハーバード大学で食と健康に関する研究をしていた米国ボストン在住の内科医師・大西睦子氏に聞いたところ、予想外の回答が返ってきた。
「これまで、ワインを摂取する国々はビールや蒸留酒を摂取する国々より、冠状動脈性心疾患の有病率が低いことがいくつかの研究で示されてきましたが、現在ではアルコールの『種類』より『量』が心血管疾患の予防効果に関与すると考えられています」
心血管疾患に関与するのはポリフェノールよりも、アルコール摂取量のほうが大きいというのだ。
ハーバード大学の研究者らが、12年間に及び、約3万8000人以上の男性医療従事者の飲酒習慣を調べたところ、適度にアルコールを摂取する人は、摂取しない人よりも心臓発作を起こす可能性が30~35%下がり、この減少は、ワイン、ビール、蒸留酒を飲んだ参加者で観察され、酒の種類は関係なかったという。
「ハーバード公衆衛生大学院によると、適度な飲酒は心臓病だけではなく、2型糖尿病や胆石、認知症に対しても予防効果があるとしています。
しかし、飲み過ぎはアルコールが通過する口腔や咽頭、食道のがん、アルコールを分解をする肝臓のがんのリスクを高め、乳がん、大腸がんなどのリスクも上げるといわれています」(前出・大西氏)
アルコールは適度な量に留めれば寿命を延ばす効果があるということだ。では、適度な量とはどれくらいかというと、厚労省の基準では、ビールなら中瓶1本、清酒なら1合、ワインならグラス2杯弱などとなっている。一般的な感覚では、「適量」は「少量」に思えるかもしれない。