卵子凍結のために、採卵する手術の様子
マイナス196度の液体窒素が入ったタンク。そこには凍結した卵子が入っている――
10月26日、『クローズアップ現代+』(NHK午後10時~)では「老化を止める?”卵子凍結”の真実」と題し番組を放送する。同番組では、NHK独自の調査結果とともに、卵子凍結と、それを用いていつの日か出産したいと望む女性たちの”今”について特集する。
番組では、NHKが全国の高度な不妊治療を行う医療機関を対象に行った独自の調査の結果、多くの女性が卵子凍結を行っている実態を初めて明らかにした。同番組のディレクター・丸岡裕幸さんはこう語る。
「多くの女性が卵子凍結を行っているということにまず驚きました。ある程度の数はあるだろうと思っていましたが、その予想を大きく超えていました」
これまでその実態が全くわかっていなかった「健康な女性で凍結卵子を使った出産経験者」がすでに複数人いることも同番組の調査で判明したという。
「その結果は、卵子凍結が将来の出産を約束するものではないことを示していました。卵子を凍結さえすれば、出産までの時間が猶予されると考える方もいますが、現実には必ずしもそうではなかったことがわかりました」(丸岡さん)
卵子の数は胎児のうちに決まっている。卵子のもととなる細胞は、その時期に一生分が作られるからだ。その数はおよそ700万個。しかしその数は出生時には約200万個に減少し、初潮を迎える思春期までに20万~30万個にまで減る。その後も年齢を重ねるごとに数が減っていく。数が減るだけでなく、質も下がる。妊娠しにくくなるのだ。
この卵子の老化が注目されるようになったのは、2012年だ。同年2月にクローズアップ現代、同年6月にNHKスペシャルで『産みたいのに 産めない~卵子老化の衝撃~』が放送され、多くの女性たちが卵子が老化することを初めて知り、それが不妊につながることに衝撃を受けたのだ。それならば、老化する前の、妊娠する能力の高い卵子があるうちにそれを採取し、保存しておきたい。そう考える女性たちによって、卵子凍結に熱い視線が注がれるようになった。「今は忙しくて産めない」「まだパートナーに巡りあえていない」――そんな社会的な理由で選ぶ人が増えているのだ。
当時、女性8000人を対象にNHKスペシャルが行ったアンケートでは、「妊娠して当たり前、妊娠できなのはあなたが悪いという社会の考えを根底から崩さないと不妊治療に取り組んでいる女性は救われない」、「もっと早く子供をもうけていればと思っても今さら戻れない」、そんな声が届いたという。
実は前出の丸岡さんは、NHKスペシャル『産みたいのに 産めない~卵子老化の衝撃~』のディレクターも務めていた。
「アンケートによって浮かび上がったのは、不妊が急増する社会の背景、さらに夫の無関心によって広がる不妊の実態でした。卵子が老化するという事実を知ったとしても、女性たちがすぐに妊娠、出産に踏み切れない社会の構造的な問題があるのです。
それから4年たった今、子供を産み育てやすい社会になっているとは言えません。当時8000人の女性が上げた”叫び”を私たち社会が受け止められなかったということです。“産みたいのに産めない”、今も変わっていないそんな叫びを減らすために、今回の番組が卵子の老化の”真実”について知り、考えるきっかけになってほしいと思っています」(丸岡さん)
今回、『クローズアップ現代+』では卵子凍結によって実際、出産した女性へのインタビューのほか、卵子凍結を行うクリニックが実施するセミナーに集まる女性の様子や、卵子凍結の成功率、リスクなどについても徹底取材している。女性セブン10月27日発売号でも「卵子凍結の今」について特集しているので併せてご覧ください。