NHKの連続テレビ小説『べっぴんさん』がいまいち盛り上がっていない。視聴率20%を割ることも多く、前作『とと姉ちゃん』、前々作『あさが来た』と比べて、物足りなさを覚える視聴者も多いのではないだろうか。ドラマの内容に「元気がない」と斬るのはコラムニストのペリー荻野さんだ。ドラムを盛り上げるための策とは? ペリーさんが分析する。
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『べっぴんさん』が元気がない。そりゃそうだ。今描かれているのは、終戦直後。ヒロインすみれ(芳根京子)がお嬢様として暮らした立派な神戸の家屋敷は焼失、土地も接収されてしまった。
頼りの夫・紀夫(永山絢斗)は消息不明のままで、伯父(本田博太郎)の家に身を寄せれば、邪魔者扱い。神戸に戻り、なんとか自活の道をと得意の手芸でコツコツ作った品物も「ぜいたく品」とまったく売れない。なんとかアメリカ流のおしめを作ろうと試みるが…。
これで元気を出せと言う方が無理という気もするが、全体を見てみて、この元気のなさの原因は、ヒロインの環境の問題だけではないようにも思える。
そもそもヒロインがとってもおとなしいのである。少女時代の唯一の冒険が自分の靴を仕立ててくれる職人の店に行って、家に帰れなくなったこと。結婚した時も、ウエディングドレスを着て大はしゃぎするわけでもなく、物静かな花嫁さんだった。しかも、その相手の紀夫がものすごく無口ときている。ふたりはいつもちょっとにっこりして、しーん。
夫が出征してからは、刺繍を入れた手作りの写真入れに入れた夫の写真を見つめる日々。涙ぐんで、しーん。微笑んで、しーん。
こんな風に感じてしまうのは、我々朝ドラ視聴者が、ここ数年、よくしゃべるタフなヒロインを見続けていたせいかもしれない。『ごちそうさん』のめ衣子(杏)、『花子とアン』の花子(吉高由里子)、『マッサン』のエリー(シャーロット・ケイト・フォックス)、『あさが来た』のあさ(波瑠)…彼女らは、思ったことをどんどん口に出し、実行に移す。全力疾走するような生き方が痛快でもあった。
『べっぴんさん』の場合、出ていけと無慈悲なことを言いだす伯父に抗議したり、「出ていきます!!」と宣言したのは、すみれではなく、姉ゆり(蓮佛美沙子)だった。め衣子が、川にどぼんと落ち、花子が女学校で酔っぱらい、エリーはがコットランドから駆け落ち、あさが新選組相手に啖呵を切ったりしたことを思えば、すみれにも「すごい発言、すごい動きをした名場面」がやっぱり欲しい。