50階建てのタワーマンションのエレベーターホール。向かって右は高層階。向かって左は低層階。どちらに曲がるかで住民の“格”が決まる──。夫と子供とともに憧れのタワーマンションに引っ越した菅野美穂(39才)演じる主人公が住民による「タワマンカースト(格付け)」に翻弄されるサスペンスドラマ『砂の塔~知りすぎた隣人』(TBS系)が話題だ。
一般に高さ60m以上、20階以上の住居がタワマンとされる。全国に約9万戸あり、最近では大都市圏だけでなく地方にも増えている。ドラマの舞台は50階建てのタワマンで、それ以上の高さのタワマンは日本に30棟ほどある。
高い階ほど価格が上がるタワマンでは、高層階の住人ほど年収や勤務先のグレードが上がりがち。「階数」は「ヒエラルキーそのもの」だと都内の40階建てタワマンの2階に住む40代事務員が苦い顔をする。
「ウチのマンションは分譲なので、全部屋の価格表を持っています。郵便受けを見れば誰がどの階の住人かわかるので、価格と階数をチェックしちゃいますね。住民はごく自然に『30階の田中さん』『10階の鈴木さん』などと名字の前に住んでいる階数をつけて呼び合うんですが、それが気になって…。子供まで『2階の○○さんの息子さん』と言われると、正直バカにされている感じがします」
低層、中層、高層でそれぞれ使用するエレベーターが違うタワマンも多い。都内のタワマン低層階に住む40代パート主婦が悲しげな顔でつぶやく。
「マンションには住民用のキッズルームがあり、そこで自然にママ友ができます。子供を遊ばせながらママ友たちと談笑した後、ホールで高層階に住むママ友に『それじゃあね』といって、子供と一緒に低層階用のエレベーターに乗るときは、すごく切ない気持ちに。子供に顔色だけは悟られないように気をつけていますが…」
タワマン格差には、地域的な特徴もある。東京でいうと、六本木や赤坂などにある超高級タワマンでは、住人全員がお金持ちなので格差が少ない。
一方で芝浦や豊洲のような、一般のサラリーマンでも背伸びすれば手の届く「埋立地タワマン」では上と下の格差が大きくなる。
「ウチのタワマンは高層階が優雅な専業主婦マダムばかりで、低層階は夫の収入がそれほどでもないけれど35年ローンで購入した共働き家庭が多い。最上階に住むマダムたちは、低層階でパートと子育てに追われてゼイゼイ言っている『きりきりママ』を完全に見下しています」(埋立地タワマンに住む30代会社員)
もともと東京の山の手出身で、今は湾岸地域のタワマン低層階に住む40代主婦はこう声を潜める。