上原謙と小桜葉子の俳優夫婦の間に生まれた加山雄三(79)は、高校生の時に祖母に連れられ神奈川・大雄山で修行をしたことがある。
華やかな芸能界でもてはやされる二枚目俳優の父親の姿を見て、「自分は出来損ないだ」と感じて出家を考えたのだという。この時、滝に打たれて悟りの境地に触れた体験をした。
「自分の中にある汚れた気持ちが洗い流されるような感覚でした。すべてを浄化する気持ちが、いつか自分の心の中に芽生えるのではないか。不思議にそう思えたので、出家することはやめました。
現実の社会にも苦しみや悩み、越えることの困難な山がたくさんある。そんなとき、僕は祖母の『享楽からは失うものが多く、苦しみからは得るものが多い』という言葉を思い出すのです」(加山、以下「」内同)
その日以降、加山は1日に2度の水浴びを続け、健康そのものだという。バイタリティあふれる行動力と旺盛な好奇心、そして、健康な肉体。若さを維持する秘訣を聞いた。
「若い? 本気でいってるの?(笑い)。そう見えるのなら、いまだに現役でいるからじゃないかな。現役を退くと途端に気迫がなくなって老け込む人が多いけど、どんな仕事でも目的を持ち、毎日気を張って生活している人は考え方も若くなります。
僕だって、音楽や絵画だけでなく、エコについても何かできないかと考えている。2020年までに二酸化炭素の排出量の削減を目指す『チャレンジ25』という政府プロジェクトがあって、その応援団のキャプテンをやらせていただいています。まだまだやりたいことがたくさんあるんですよ」
●かやま・ゆうぞう/1937年、神奈川県横浜市出身。1960年に映画『男対男』でデビュー。翌年、若大将シリーズ第1弾『大学の若大将』に主演。1962年、黒澤明監督『椿三十郎』、1965年同『赤ひげ』に出演。同年リリースの『君といつまでも』がレコード大賞特別賞を受賞。2014年に結成したTHE King ALL STARSでフジロックフェスティバルに出演。今年、画業20周年を迎えた。「画業20周年記念 加山雄三アートの世界展」が10月27~30日/大丸心斎橋店北館14階イベントホール、11月23~28日/高島屋日本橋店8階特設会場で開催される。
■取材・文/小野雅彦 ■撮影/二石友希
※週刊ポスト2016年11月4日号