全国各地で行なわれる不動産投資セミナーが活況となるなど、不動産市場は「空前のバブル」状態を迎えている。日本経済が乱高下を続けるなか、なぜ不動産市場だけが絶好調なのか。
「正直、熱狂と勢いを感じます。週末の売買相談会は毎回、満員御礼ですよ」
都心の物件を扱う、大手不動産販売会社の社員が興奮気味に語る。この熱狂を支えるのが、「超低金利」のローンだ。住宅ジャーナリストの榊淳司氏が指摘する。
「安倍政権の金融緩和で空前の低金利になり、金融機関が積極的に融資するようになった。“安く簡単”にお金を借りられる時代になったんです」
冒頭の大手不動産販売会社社員もこう打ち明ける。
「法人向け融資は伸びシロがなくなり、各銀行は貸し出し先を求めています。不動産は現物があるので貸し倒れリスクが少なく、一般のサラリーマンに億単位を融資する例も少なくない」
各行が競うように利率を下げ、1%を切るような低金利で投資用不動産ローンを準備している。国税庁(2014年)によれば、日本には323万人もの大家がいて、その数はなおも増加している。多くの人が不動産投資に舵を切っているのは、メリットが多いからだと前出の榊氏がいう。
「簡単に言えば、収益率が良い。1年間で投資額に対していくら利益が出るかを表わす『利回り』が約3~4%、都内であれば6%はあると言われる。銀行預金や投資信託などよりはるかに高く、“買えば儲かる”状況です。しかも価格が大きく変動する株と違い、都心の家賃はこの20年間でほぼ横ばい。収益の安定も大きなメリットです」
『不動産投資1年目の教科書』の著書がある玉川陽介氏は、不動産投資には「二重のうまみ」があると指摘する。
「毎月の家賃収入に加え、不動産の価格が上がれば、将来的に売却した時に利益が出る。不況になって価格が下落しても、その不動産を持ち続けていれば、やがて景気が底を打って価格が上昇に転じるし、その間も家賃収入がある。長期的な投資に向いており、減りゆく年金などの老後不安から始める人も少なくない」
ローンを組めば負債を抱えることになるので、自分が死亡した時に相続税を節税することもできる。相続税対策として始めるケースも少なくない。
このようにメリットの多い不動産投資だが、一般的には「お金持ちの投資先」とのイメージが強い。しかし、前出の榊氏は「高所得者層以外の投資も増えている」と指摘する。
「現在、銀行は年収400万~500万円くらいのサラリーマンにポンと高額のお金を低利融資することが多く、準備金ゼロで始める人もいるほど。いまは普通の人が『大家さん』になる時代です」
※週刊ポスト2016年11月4日号