10月12日、厚生労働省が新たな法整備を睨んで「たたき台」を示した受動喫煙防止対策案。これまで健康増進法などの法律に基づき、多くの施設で“努力義務”とされてきた受動喫煙防止対策の規制を強化し、罰則付きのいわば「屋内全面禁煙法」を制定しようというものだ。
万が一、厚労省案がそのまま法制化された場合、もっとも影響を受けるのが飲食業界である。新案では飲食店やホテルなどサービス業の施設内もすべて〈原則禁煙〉として、喫煙室の設置は認める──との内容が盛り込まれている。
だが、県の条例案で飲食店の〈禁煙〉または〈完全分煙〉が義務付けられている神奈川、兵庫でも散々議論されてきたように、小さな規模で経営体力もない飲食店が完全分煙の設備を整えるのは容易ではない。泣く泣く禁煙にして「客離れ→売り上げ減少→廃業」といったリスクもあることから、100平方メートル以下の客室面積しかない小規模店舗は規制を緩めた経緯がある。
そんな前例を無視して、またぞろ持ち上がった「たばこ規制」。今後、厚労省は関係団体へのヒアリングを11月末までに3回行う機会を設けているというが、飲食店を束ねる業界団体は一様に反発ムードを強めている。
全国8万以上の飲食業者が加盟する「全国飲食業生活衛生同業組合連合会(全飲連)」専務理事の小城哲郎氏がいう。
「店舗内を全面禁煙にしても、売り上げの落ち込みは一時的で、徐々に回復してくると指摘するデータがありますが、それは大手飲食店の話。われわれのように中小・零細の組合員が多く経営する飲食店は、売り上げが戻ってくるまで体力が続かず、廃業に追い込まれてしまう恐れがあります。
店内がダメなら外で吸えばいいじゃないかという主張も今は通用しません。路上喫煙を禁止する自治体が多く、店の外に灰皿を置こうものなら周囲からのクレームも相当激しい。周囲の環境の心配もなく、敷地内にテラス席があるような飲食店ならいいのでしょうが、都内中心部でテラス席があるような飲食店はわずか数パーセントしかありません」