高視聴率を記録しながら賛否両論だった前作と比較しても、朝ドラ新作の評判は悪くないといえるのではないか。ヒロインのキャラクターは対照的、演出の巧みさが光る。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。
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NHKの朝ドラ『べっぴんさん』が始まって約1か月。視聴率20%台割れと報じられる一方で、録画などによるタイムシフト視聴率は6%超と「圧倒的に高い」ことも判明。
「妙な関西弁に違和感」「主人公が少女からあっという間に結婚、子持ちになる速度感についていけない」といった意見も聞かれましたが、おおむね好評の中でのすべり出しと言えるでしょう。
朝ドラが、他のドラマと決定的に違う点。それは月曜~土曜の毎日、半年という実に長い時間、続く点にこそあります。では、それを踏まえて、今後5か月おつきあいする『べっぴんさん』の「見どころ」は? 3点あげてみたいと思います。
●その1 芳根京子さんの透明感と変化への期待
主人公・坂東すみれを演じる芳根京子さんは、まっすぐで素直で懸命。透明感があって毎日繰り返し見てもくどくない。朝ドラ主人公の王道が帰ってきた、という感じです。
好き嫌いは人それぞれですが、前作『とと姉ちゃん』の主役・高畑充希さんの演技は、役柄というよりご本人の個性・テイストが強く押し出されていて、半年間毎朝見るにはどうにも味が濃すぎた。最初から最後まで「高畑充希」。環境や状況に影響を受けて成熟していく主人公の「変化」や「成長」という朝ドラの醍醐味が、今ひとつリアルに伝わってこなかった。
では今回は? 芳根さんは無色無垢なキャラ。戦後の荒廃した社会の中で必死に生きようとする主人公のけなげさが前面に出ています。これから主人公がどのように成長し変化を見せるのか。注目したいポイントです。
●その2 時代の中で人物を描く意気込み
神戸のお嬢様が突然、邸宅も父の家業も周囲の人々も、大切なものを戦争で一気に喪失する。そのドン底から手探りで、何とか生きる希望を掴んでいこうと格闘する。敗戦という時代にしっかりと足を据えて出発した『べっぴんさん』。時代の中で人物を描こうとするその意欲も、見所です。
戦後の焼け跡生活なのに衣服やバラックがキレイ過ぎるなど、気になり始めたらつっこみ所は多々あります。探していた人がすぐに見つかる、といったご都合主義的なエピソードも、気にならないといえばウソになる。 が、「喪失から希望へ」という道筋がしっかり通っているから、細かい欠点より物語の展開の方に目がいくのです。