日本シリーズが幕を下ろし、本番を迎えるのがストーブリーグだ。オフの“戦力移動”が活発になると大きな影響を受けるのが、各球団が毎年11月半ばのファン感謝デーに合わせて発行する「球団カレンダー」である。
「例年、遅くとも10月下旬から11月上旬には印刷に入らないと、発売が間に合わなくなるんです。FAは日本シリーズ終了から1週間が申請期間で、8日目以降に契約交渉が始まる。だから、移籍か残留かは印刷時点で確定していないことがほとんどなんです」(在京球団の関係者)
結果、関係者がいかに奔走しても、様々な“珍現象”を防ぐことができない。今年の12球団のカレンダーを振り返ると、それがよくわかる。まず、25年ぶりのリーグ優勝で沸いた広島。今年のカレンダーは「1月」にいきなり、昨オフにポスティングでドジャースに移籍したはずの前田健太(28)が登場する。
「前田のドジャース入団が発表されたのは1月8日。カープファンは、カレンダーに載った広島のユニフォーム姿のマエケンを横目に、ドジャースの入団発表会見を見ることになった。気持ちは複雑だったでしょう」(担当記者)
昨年セ・リーグ優勝を果たしたヤクルトでは、「2月」に〈今年もヤクルトスタイル、ヤクルトスマイル、エイエイオー〉の言葉とともにセーブ王としてリーグ制覇を支えたバーネット(32)が登場。が、当人はその2月に契約切れでヤクルトを退団、MLBのレンジャーズへ移っていた。ちなみに、そのバーネットに代わって守護神に昇格したオンドルセク(31)は「10月」に掲載されていたが、カレンダーがめくられるよりも先に首脳陣との対立が表面化し、7月に退団(契約解除)してしまった。
移籍市場が活発化するほど、こうした“齟齬”は増えていく。
今年のロッテのカレンダーを見ると「8月」の紙面スペースの半分を占めていたのは今江敏晃(33)だが、ご存じの通りFAで楽天に移籍している。ロッテファンからすればCS進出がかかった大事な時期(8月)に、3位の座を争う相手である楽天の選手がカレンダーにデカデカと出ているのだから、心中は複雑だろう。
ロッテでは他にも「7月」の顔として掲載した二塁手・クルーズ(32)が巨人に移籍。今年のFA市場戦線では巨人の渡辺恒雄・前球団最高顧問がオフの大補強断行を宣言しているが、その宣言通りに巨人がなりふり構わぬ補強策に走れば走るほど、こうした“カレンダー騒動”も増えることになる。
※週刊ポスト2016年11月11日号