ライフ

前橋vs高崎 金も飛び交う長年の「県庁奪い合いバトル」

地上33階建ての群馬県庁(前橋市)

 日本各地には、「金沢vs新潟」「高松vs松山」など、互いに「あの街だけには負けたくない……」と、ライバル心をむき出しにする戦いが存在するが、群馬県ではそれが県内で行われている。群馬県の県庁所在地である前橋と、人口や面積で上回る高崎には深い因縁がある。両市は長年にわたり、県庁所在地の奪い合いをしてきたのだ。

 1871年10月、旧前橋藩(前橋県)と旧高崎藩(高崎県)などが一緒になって“第1次群馬県”が誕生し、最初の県庁は旧高崎城下に開庁した。その7か月後には旧前橋城下に移転。さらに1876年、周囲の県と合併して、再び高崎に仮県庁が置かれたのが、“第2次群馬県”である。

 それで一件落着かと思いきや、その後5年間にわたり両市の間で誘致合戦が起こり、1881 年、ついに政府の太政官布告により県庁所在地が高崎から前橋に改定された。その背景について、共愛学園前橋国際大学名誉教授の石原征明氏が語る。

「生糸貿易で財を成した前橋の商人が、巨費を投じて県庁誘致運動を起こした。当時の群馬県令は高崎市民の反発を受けて“地租改正”(※注)が終わればすぐに高崎市に県庁を移す“と約束していましたが、太政官布告によって、約束が守られることはなかった。反発した3000人の高崎市民が前橋に向かいデモするという事態も起きました」

【※注/県内の地租を集約する必要に迫られたため、県庁が数か所に分散している高崎よりも、1か所に集約している前橋の方が効率的とされた】

 それから100年以上が過ぎた今も、高崎市民の“県庁奪還”への思いは消えておらず、「高崎駅前には高島屋もヤマダ電機もある。新幹線も停まる。市内総生産も人口もいまや高崎が上。前橋はいつまで群馬の顔気取りなんだ」と憤る。前橋と高崎の市庁舎間の距離はたった 12キロ。しかし、両市の心の距離はその何倍もあるのだ。

※週刊ポスト2016年11月11日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
NASAが発表したアルテミス計画の宇宙服のデザイン(写真=AP/AFLO)
《日本人が月に降り立つ日は間近》月面探査最前線、JAXA「SLIM」とNASA「アルテミス計画」で日本の存在感が増大 インドとの共同計画や一般企業の取り組みも
週刊ポスト
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト