食品に関する俗説といえば、「食べ合わせ」に関するものが多い。例えば、うなぎと梅干しの食べ合わせは「うなぎは脂が多いから梅干しの酸が作用して消化不良を起こす」と言われてきた。
だが元順天堂大学教授で、アンチエイジングを専門とする白澤抗加齢医学研究所所長の白澤卓二氏はこう言う。
「免疫力を高めるビタミンAが豊富なうなぎと、食欲増進や疲労回復に効くクエン酸の多い梅干しは、むしろ積極的に組み合わせてもいいくらいです」
逆に、相性抜群と思われていたはずの組み合わせでも、栄養の観点からは問題なカップルもある。
「しらすと大根おろしの組み合わせは定番ですが、相性はよくありません。しらすなど魚類全般には必須アミノ酸のリジンが含まれ、体の成長促進や修復を担う役割を果たしています。ところが大根にはリジンインヒビターという抗体が含まれ、リジンの吸収を妨げてしまうのです」(前出・白澤氏)
大根を加熱すればこの問題は解消されるとのことだが、「温かい大根としらす」では、どうも食指が動かない。西台クリニックの済陽高穂院長が挙げるのは、サンマと漬け物の組み合わせ。
「魚を焼くとジメチルアミンという物質が出ますが、これが漬け物に含まれる亜硝酸ナトリウムと化合してニトロソアミンという発がん性物質に変化してしまう可能性があります」
こうなってくると、一体何を食べれば良いのか疑心暗鬼にもなってしまうが……。
「栄養学の発達や分析によって、昔から信じられている『体に良い食べ物』『体に悪い食べ物』の概念自体が変わってきています。昔からの固定観念にとらわれるのではなく、きちんとした論拠に基づく知識を知った上で、自分の判断で食べることが大切です」(同前)
科学技術が日進月歩であるように、食の常識も研究者たちの調査や実験によって日々アップデートされている。過去に持て囃された常識が今や非常識となってしまったように、本稿に記した「最新常識」が将来、否定される日が来ることもあるのだ。毎日口にするものだからこそ、“思い込み”には注意したい。
※週刊ポスト2016年11月11日号