『週刊ポスト』では「京都ぎらい」「名古屋ぎらい」「横浜ぎらい」「広島ぎらい」と、各都市の嫌われる理由を紹介したシリーズをお届けしてきた。その中で浮かび上がってきたのは、近隣の人ほど敏感に反応する、いわば“同地域内の近親憎悪”の激しさだ。いずれも日本海側の都市で、どちらも東京から新幹線で気軽に行ける新潟市と金沢市もそんな関係だ。
「新潟は人口80万を超す日本海側唯一の政令指定都市。(人口46万人の)金沢なんて相手にならない」
そう新潟市民が息巻けば、
「金沢は全国にたくさんある“小京都”のなかでも飛び抜けた存在です。新潟は“日本海側ナンバーワン”っていうけど、そもそも北陸なのか、東北なのか関東甲信越なのか、はっきりしろと言いたい。金沢こそ『ザ・北陸』ですよ」
と金沢市民が切り返す。両市が何かと張り合う理由を、県民性研究の第一人者・矢野新一氏はこう解説する。
「大化の改新以前の古代では、今の福井県から山形県の一部まで越国(こしのくに)と呼んでいた。元をたどれば“似た者同士”だけに意識し合うことが多いのでしょう」
人口は平成の大合併前までは40万~45万人程度で拮抗していたが、現在では新潟が金沢を圧倒。新潟はこの数字を元に「我こそが“北陸の都”」と主張するが、金沢の受け止め方はまったく逆だ。「あえて合併せずに金沢らしさを守ったんです。新潟みたいに、ただ人口が多ければいいってもんじゃない。田中角栄の時代から新潟は数字のことばかり。田舎くさいんですよ」(金沢市民)
そうした態度に、新潟市民はカチンとくるようだ。
「出身を聞かれて石川県ではなく・金沢です・と自慢げに答える。小京都とか、とにかく気取ったところが嫌」(新潟市民)
金沢自慢の古い街並みも、新潟市民から見れば「路地が入り組んでいて、せせこましい。その点、新潟は道路も広くてバスも走りやすい」となる。
金沢市民のプライドは筋金入りだ。
「金沢は加賀百万石の一大城下町。裕福な暮らしを送っていた背景があるため、見栄っ張り気質の市民が多い。金沢には『財産三分法(金が貯まったら骨董品、不動産、商売に分散する)』という言葉があるように、経済的に裕福でゆとりがあった。ロレックスの代理店に言わせると人口当たりでロレックスが一番売れているのは金沢ではないか、とのことです」(前出・矢野氏)
しかし、こと“お金”に関しては新潟市民も黙っちゃいない。
「新潟は石油やガス関連の地場産業が発展していて、小金持ちが多い。そういう人は市内の三越や伊勢丹によく行くわね。金沢の大和百貨店という老舗も進出してきたけど、6年前につぶれちゃったわ」(新潟の女性)
※週刊ポスト2016年11月11日号