神社本庁の機関紙として昭和21年に創刊された『神社新報』。全国の神社、総代、氏子・崇敬者を中心に購読されている発行部数5万部の週刊新聞(毎月月曜発行)には、宗教関係の記事をメインに、その主張が反映され独特の論が展開されている。フリーライターの清水典之氏が、同紙の「皇位継承」についての主張を紹介する。
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今年8月8日に天皇陛下が生前退位のご意向を表明されたとされるビデオメッセージについて、神社新報は8月15日付の一面トップで報じたが、事実を淡々と伝えるのみ。「生前退位」の評価や皇位継承が「安定的に続いていくこと」についてはあえて踏み込んでいないように見て取れる。だが、過去の皇室関連の記事に目を通すと、神社本庁の考えが浮かび上がってくる。
平成13年12月1日に愛子内親王が誕生され、同年12月10日付の紙面は奉祝記事で覆われた。そのなかに小堀桂一郎・東大名誉教授の論考があり、〈もし皇室典範の改正を論ずるならば、それは女帝容認論からではなくて(中略)、旧皇族の宮家復活論等から論じてはいかがであらうか〉と述べている。
神社本庁は男系男子による皇位継承を堅持すべしとの立場だ。だから、愛子内親王のご誕生で、女系・女性天皇容認論が浮上することを警戒していたように見える。
その危惧は現実のものとなる。小泉政権下で組織された私的諮問機関「皇室典範に関する有識者会議」は、女系・女性天皇を認めよと提言した。
それに対し、平成17年11月28日付紙面で、〈皇位が百二十五代に亙って男系により継承されてきた歴史伝統を一蹴した〉と激しく非難。矢田部正巳・神社本庁総長(当時)も「総長談話」で登場し、〈現今の少子化問題やいはゆる「ジェンダー・フリー」などで主張される特定の価値観が前提とされてをり、あたかもそれを押し付けるかの如くである〉と反対論を展開している。
しかし、その翌年、秋篠宮家に悠仁親王が誕生されると、平成18年9月18日付は再び奉祝の記事で埋まる。宗教ジャーナリストの斎藤吉久氏はその喜びを、自身の連載で〈暗黒の世に光をもたらした天岩戸の物語を彷彿とさせ、皇祖神の御神意を思はずにはゐられない〉と表現した。
それに続けて、大手新聞が相変わらず女系・女性天皇を容認する社説を載せていることを批判。さらに、〈この際、憲法の天皇条項をふくめて、皇室制度全般について、より根本的な議論がじっくりと進められることが期待される〉と述べている。「憲法の天皇条項」も議論せよと主張しているのだ。
※SAPIO2016年11月号