日本が世界トップの長寿国なのは、米を主食にすることで脂肪が少なく、かつ、肉、魚、大豆などをバランスよく摂取しているためだといわれる。では、逆に日本の高齢者の食事に、不足しているものは何だろうか。武庫川女子大学国際健康開発研究所の家森幸男所長が語る。
「日本では認知症や寝たきりになる人が多く、寿命は長いが、健康寿命(日常生活に制限のない期間)はそれほど長くない。理由は塩分の摂取量が多いからで、脳卒中や骨粗鬆症などを発症する人が多いからです。
ところが、諸外国の長寿国を見ると、日本人並みに塩分を取っているにもかかわらず、健康寿命の長い国があります。それがコーカサス(黒海とカスピ海に挟まれた地域)で、野菜や果物をたくさん食べて、カリウムを摂取することで、塩、つまりナトリウムの影響を抑えている。さらにヨーグルトもたくさん摂ることで、血圧を正常に保つカリウム、骨を作るカルシウム、抗炎症作用を持つマグネシウムをたくさん摂ることができ、脳卒中を予防できるのです」
元参議院議員の村上正邦氏が、現在98歳になる中曽根康弘元総理について、こんな話を明かした。
「官邸の執務室の机のひきだしやカバンにバナナをしのばせて、いつもバナナを食っていたな」
バナナはカリウムが豊富だ。さすがは大勲位である。健康長寿のためには、イソフラボンを摂れる大豆、タウリンを摂れる魚、カリウムや食物繊維のある野菜や果物、ミネラル類を摂れるヨーグルトを食べるように気をつけるということだ。
ただ、同じ乳製品でもチーズは塩分を多く含むので、その点に注意が必要だという。ちなみに家森氏が勧めるのは、「ヨーグルトにジャコときな粉(大豆)を入れて食べれば、ほぼ満点になります」とのことだが、味の保証はできないところだ。ちなみにジャコが推奨される理由は、魚は「内臓や頭も丸ごと食べる」ことにより必要な栄養素が取れるため。ジャコであれば、一匹丸ごと食べられるというわけだ。
※週刊ポスト2016年11月11日号