日本は寿命こそ世界トップクラスだが、認知症や寝たきりになる人が多く、健康寿命(日常生活に制限のない期間)はそれほど長くない。理由は塩分の摂取量が多いからで、脳卒中や骨粗鬆症などを発症する人が多いからだ。
健康長寿のためには、イソフラボンを摂れる大豆、タウリンを摂れる魚、カリウムや食物繊維のある野菜や果物、ミネラル類を摂れるヨーグルトなどの摂取が鍵を握る。こうした食材の摂取量は、日本国内でも地域によって差があり、それが都道府県ごとの健康寿命の差に現われていると考えられる。
食文化史研究家で綜合長寿食研究所所長の永山久夫氏は、国内の“長寿村”と呼ばれる地域の食生活を長年にわたり調査している。
「厚労省の研究班が全国20大都市の健康寿命を調査したデータによると健康寿命ナンバーワンは浜松でした。お茶とウナギの消費量が非常に多い地域です」(永山氏)
緑茶については、ポリフェノールの一種であるカテキンが含まれていて、血圧降下作用や血中コレステロールの調整作用、血糖値調節作用、抗酸化作用などがあるとされている。
「ウナギは魚の範疇に入りますが、オメガ3系の必須脂肪酸であるDHAとEPAが豊富に含まれている。これらは健康に良い脂で、体細胞だけではなく脳細胞の老化を防ぐ効果があります」(同前)
ただ、ウナギは絶滅危惧種に指定され、価格は文字通り“うなぎ登り”。気軽に食べられるものではなくなりつつある。そこで永山氏が勧めるのは、「鮭」だという。
「鮭にもDHA、EPAが含まれますが、身の赤い色素は『アスタキサンチン』といい、抗酸化作用が高い。私は福島県の鮭が遡上する川の近くで育ちましたから、鮭を毎年食べていました。焼いた骨はお湯をかけて食べるとカルシウムも摂れ、高齢者の大敵になる骨粗鬆症の予防にもなる。鮭は捨てるところがまったくない長寿食だと思います」
丸ごと食べると効果的で、骨を食べる際は、焼いた後、レモンを絞るといいという。
「コラーゲンはビタミンCと一緒に摂ると、吸収率が高くなります。頭や尻尾などは煮込んでガラスープにして飲む。身のたんぱく質が分解されてアミノ酸になり、コラーゲンを含むスタミナドリンクのようなスープになります」(永山氏)
※週刊ポスト2016年11月11日号