映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。現在公開中の映画『グッドモーニングショー』に主演する中井貴一の言葉から、俳優人生について語った言葉をお届けする。
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中井貴一は、同時期に全く異なる演技を見せてきた。近年でもフジテレビのドラマ『最後から二番目の恋』で平凡な市役所職員を演じながら、NHK時代劇『雲霧仁左衛門』では貫禄の芝居で盗賊の首領を演じている。
「エンターテインメントは、常に緩急だと思っています。それは俳優人生も同じです。俳優の人生を一つの映画とした場合、そこにも緩急を考えながらお客さんに見せていきたい。
僕は19歳で会社を作り、自分で判断したり、スタッフたちと相談しながら物事を決められる状況にありました。そうすると、どうしても選ぶ仕事が自分の好みに寄りがちになってしまうことがあります。なるべくそれを払拭して、それでも役の好き嫌いはどうしても出てしまいますが、その選び方に緩急をつけることで、お客さんに飽きないようにしていただきたいという気持ちは強くあると思います。ですから、軽い役と重い役とを配分してやっていくということは意識しているつもりです」
そんな中井貴一が目指す役者像とは、どのようなものなのか。