中国人民解放軍の元南京軍区副司令官、王洪光中将は台湾問題に関して、今年5月に台湾の最高指導者に就任した蔡英文・台湾総統が「一つの中国」の原則を明言していないことは、中国の「反分裂国家法」にある「中国と台湾の平和的統一が不可能」を意味し、中国軍の武力統一の条件に一致すると指摘した。王氏が中国共産党機関紙「人民日報」傘下の国際問題紙「環球時報」のインタビューで答えた。
王氏は台湾との有事の際に主力となる南京軍区の出身で、長年、台湾の武力統一のための侵攻作戦などを現場で担当してきた。すでに、引退したとはいえ、軍内での対台湾軍事作戦に詳しい王氏が武力侵攻の条件に言及することで、台湾の蔡英文指導部への威嚇の意味があるとみられる。
王氏は山東省の生まれで、1968年3月に入隊し、解放軍総参謀部の兵科部副部長などを務め、1998年に陸軍少将に昇格。2005年12月に南京軍区副司令官に就任し、2007年7月には陸軍中将の昇進、3年前の2012年12月に退役している。2005年から7年間、台湾有事の際、台湾侵攻作戦を担う南京軍区で副司令官を務めており、軍事専門家の中でも台湾のエキスパートと目されている。
王氏は中国軍による台湾攻撃の可能性を明文化している「反分裂国家法」の条文のなかで、現在の台湾指導部の態度は「一つの中国を認めない場合、中国軍は武力を用いても統一を断行するという条項に明らかに当てはまっている」と主張。
このうえで、王氏は蔡英文指導部の一部高官が中台は「特殊な国と国の関係である」とか、「台湾は主権国家である」と明言していることからも、台湾側が「一つの中国を標榜しておらず、台湾独立を企んでいると思われても、不思議ではない」と言及。この場合、中国軍による台湾への軍事侵攻の可能性も捨てきれないと断定している。
このような台湾への軍事作戦の主体となる役割を南京軍区から引き継いでいるのが、昨年創設された「東部戦区」だ。王氏によると、東部戦区では蔡英文指導部の発足後、対台湾軍事作戦の実戦訓練や台湾侵攻の際の新型兵器の開発、三軍合同の軍事作戦の策定などに取り組んでおり、今後の台湾側の動き次第では、軍内で対台湾強硬路線が浮上する可能性も排除できないと指摘している。