香港では急速に中国共産党政権の影響力が強まっているが、それに合わせて香港の言論の自由を代表する英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」の中国化も目立っている。その端的な例が同紙中国語版(電子版)の突然の廃止であり、中国大陸からの閲覧も不可能な状態になっている。『習近平の正体』などの著書があり、香港や中国の情勢に詳しいジャーナリスト、相馬勝氏が解説する。
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同紙は香港が英国の植民地だった1903年11月の創刊で、1997年の香港返還までは政庁寄りの論調の記事が多かったしかし、中国系華僑でマレーシアの富豪、郭鶴年氏が同紙を買収してからは、中国政府寄りの論調が目立ち始め、反中的な論調が目立ったコラムニストが次々と解雇されていった。
さらに、昨年12月には中国eコマース企業大手のアリババ集団を率いる馬雲(ジャック・マー)会長が買収を発表。
その後、今年9月にはずっと続いていた中国語版が突然、中止され、「インターナショナル・エディション(国際版)」として英語版に変わった。これは、一般の中国人が同紙の記事を読めないようにするためとの見方が強い。
これを裏付けるように、それ以前の今年3月、同紙のSNSのアカウントも停止されるなど、中国からのアクセスが不可能な状態になっている。
アリババ集団が同紙を傘下に入れたことで、ウェブサイトで無料で読める記事の数を制限する「ペイウオール」を廃止するなど、同社はデジタル戦略に力を入れている。それとは裏腹に大きな市場であるはずの中国本土からはネットで閲覧できない状況がいまも続いている。
馬氏は習近平国家主席が浙江省トップ時代、とくに目をかけてもらい、習氏の上海市トップへの異動と同時に本社を上海に移し、さらに国家副主席として北京入りすると、アリババ集団も拠点を北京に移転するなど、習氏とともに急成長してきた。北京の党幹部筋は「習氏と馬氏は極めて親密な関係を維持している」と語る。
中国では習氏が最高指導者に就任して以来、メディアの報道規制が厳しくなっており、今回のサウス紙の中国語版廃止も馬氏が習氏の意向を忖度して、実施した実質的な香港での報道管制であり、規制強化であるとみるのは間違いないだろう。