渋谷、六本木などでコスプレ姿の若者相手に警察が出動する騒ぎになっていた10月31日、神戸市灘区では、もっと緊張感のあるハロウィンが行なわれていた。
「パイの実」や「パックンチョ」、「ポテトチップス」など、様々な種類のお菓子が詰まったサッカーボール大ほどの袋が、子供たちに配られていく──異様なのはその周囲に、目を光らせる警察官たちがいたことだ。場所は六代目山口組総本部近くの神社。
「この“イベント”は一昨年までは周辺住民の不安を柔らげるために、毎年の恒例行事となっていたものでした。それが昨年は8月に分裂騒動が起きたために『諸般の事情により中止』という掲示が総本部前に出された。今回は2年ぶりの“復活〟となったのです」(捜査関係者)
お菓子の配布は、31日の午後5時から約1時間にわたって行なわれた。例年同様、周辺住民の緊張を柔らげる狙いがあったのは間違いなさそうだが、今回はそれに加えて別の理由もありそうだ。暴力団問題に詳しいジャーナリスト・伊藤博敏氏が解説する。
「去年の分裂のあと、総本部近くの住民たちの間では、“神戸山口組サイドが襲撃してくるのでは”と不安が高まっていましたから、関係をよくしたいという思いは当然あるでしょう。でもそれだけではありません。
六代目側は神戸側に対して“余裕を見せたい”という考えがあるのではないか。“メディアを使った情報戦で神戸側に押されていて劣勢”という風評が少なからずあり、それを払拭したいのだと考えられます。ハロウィンを復活させることで、“こちらはいままで通りやっている”“神戸側が劣勢だ”ということを暗に示したいのだと思います」
睨み合いの状態が続いている「2つの山口組」抗争。すでに神戸山口組系幹部が射殺される事件が起きており、次に神戸側からの「返し」が行なわれたら、次こそは本格抗争につながると伊藤氏はいう。
果たして、ハロウィンでの“住民懐柔作戦”は吉と出るか凶と出るか──。
※週刊ポスト2016年11月18日号