落とし物は、発見されると交番や駅、デパートなどの商業施設の窓口に届けられる。約2週間はそこで保管されるが、落とし主が見つからない場合、各県警や府警が管理し、東京に関しては、飯田橋の警視庁遺失物センターに集まって来る。
警視庁遺失物センターには、職員が驚くようなものも届けられている。杖、電子レンジ、結婚式の引き出物、そして…。
「数自体はそう多くないのですが骨つぼの届けもあるんです。遺骨の場合は犯罪の可能性もあるので、普通の落とし物とは違って、まずは警察が捜査します。誰が保管していたのか、追跡調査をしてきちんと事件性がないことが判明されてはじめて、保管となります」(警視庁遺失物センターのセンター所長・須賀隆さん)
近年、墓をめぐる問題が深刻化している。過疎化、核家族化の影響で、地方には無縁仏が増え続け、都心部では土地が高騰し、墓を買えない人が多い。
では遺骨をどうするか――遺骨は法律上、勝手に遺棄することはできないので、納骨するか、手元に置いておくかしなければならない。それゆえ遺骨の落とし物は、やむにやまれぬ事情が絡み合い不幸の連鎖ともいえよう。
読売新聞によれば、2012年に九州圏で16個、近畿・四国圏で27個、警視庁管内で10個もの骨壺の遺失物があったとされる。それらは電車の網棚や公共トイレなどで発見されているが、いずれも戒名札や火葬場を特定できるような包みが取り除かれていたという。つまり、それらは「落とし物」ではなく「捨てられた物」なのだ。
「基本的には、拾った人が、落とし物だろうと届けているものなので、どんなものでも警察はゴミだと判断できません。もちろんゴミの集積所から持って来たらゴミになりますが、そうでなければ、忘れたか落としたのだと想像するので、すべてきちんと対応します。捨てたものかどうかなんて、私たちはわかりませんから…」(須賀さん)
※女性セブン2016年11月17日号