いつもは可愛いペットだが、何かのハプニングで人を噛んでしまうことも──。34才の愛犬家からこんなお悩みが届いた。
「散歩中のこと。愛犬が、突然声をかけてきた通行人に噛みついて、けがをさせてしまいました。幸いけがは軽傷ですみましたが、治療費や慰謝料など、飼い主はどんな責任を負うのでしょうか?」(埼玉県・ももちゃん、34才・自営業)
このお悩みについて、ペットに関する事件・トラブルなども取り扱う弁護士でペット法学会理事の杉村亜紀子さんがアドバイスをする。
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環境省が発表した平成26年度の犬の咬傷事故件数は年間4364件。そのうち、犬が人に噛みつく事故は約4200件も起きています。しかも咬傷事故を起こした犬の91%は飼い犬で、発生した状況も、リードをつけての散歩中が全体の3割にも達しています。
◆治療費、入院費、交通費など慰謝料は高額になる可能性が
飼い主が注意をしていても、なんらかの刺激が引き金となり咬傷事故は起きてしまいます。その場合、民法718条1項により飼い主は「動物の占有者」として、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負います。
今回のケースですと、ももちゃん宅の愛犬が通行中だった被害者を噛んでけがを負わせてしまったので、けがの治療費を支払う義務が生じます。今回は軽傷でしたが、もし重症で入院した場合には、入院費や入院雑費も賠償の対象となります。他にも、通院のための交通費、通院やけがのために仕事を休んだ場合の休業損害なども対象となり、けがで後遺障害が残った場合には、それにかかわる慰謝料なども賠償の対象となります。
実際の裁判では、散歩中の犬が被害者に衝突し、被害者が転倒してけがをして後遺障害(10級)が残ってしまった事案について、総額2000万円以上の損害賠償を命じたものも。万が一、ペットが人間を死亡させてしまった場合には、もっと多額の賠償が認められる可能性があります。
◆万が一に備えて保険の加入も健闘を
このように犬の咬傷事故では、治療費、慰謝料など賠償額が高額になる可能性が極めて高いので、すべての飼い主はうちの子は大丈夫と過信せず、外出時には愛犬から目を離さず、噛みつき癖のある子は一度プロのトレーナーに訓練してもらうのもいいでしょう。
また、万が一に備えて噛みつき事故などに対応するペット保険への加入を検討するのもおすすめです。自動車保険、火災保険、傷害保険の特約としてペットによる事故がカバーできる場合もあります。一度、確認してみるのもいいでしょう。
※女性セブン2016年11月17日号