丹後半島に位置する海と山に囲まれた人口約6万人の小さな港町が脚光を浴びている。週刊ポスト(2016年11月11日号)で紹介した〈「長生きする人が食べている物」「早死にする人が食べている物」〉で一際反響が大きかったのが、京丹後市(京都府)についてだった。
現在100歳を超える“百寿者”が77人もいる“日本一の長寿村”について、「どんな食生活を送っているのかもっと詳しく知りたい」との問い合わせが相次いだのだ。そこで本誌記者は、現地に飛んだ。
京丹後市には100歳を超える長寿者(以下、百寿者)が77人(男11人、女66人)もいて、“日本一の長寿村”として全国に名を知られるようになった。
全国の百寿者は6万5692人(厚労省調べ、2016年9月15日時点)いる。京丹後市は人口10万人に換算した場合の百寿者が133人で、全国平均(48.45人)の約3倍になる。
京都府立医科大と同市は、「長寿・地域疫学講座」を設置して、健康・長寿の要因を解明する研究を始めている。健康と食事の因果関係はいうまでもなく、「百寿者たちの食卓」は実に興味深い研究テーマなのだ。
1915(大正4)年生まれ、現在101歳の志水富重さん(京丹後市在住)は、耳が遠いこと以外に、体調の悪いところはない。趣味は釣りで、海が荒れていなければ、今でもバイクで出かけるという。
「よく釣れるのはアジで、刺身や煮つけにして、食べきれない分は冷凍しとる。食事が偏らないように、肉、魚、肉と交互にするようにしてな。野菜は家庭菜園の無農薬野菜。NHKの健康番組が好きで録画して見ています」
食事は軍隊にいた頃の名残で、朝は6時、昼は12時、夜は18時と時間を決め、1日3食きっちり取る。足腰が弱くなってきた妻のやよいさん(94)に代わり、調理はすべて富重さんが手際よく行なう。
「『薄味が健康にいい』『腹八分目がいい』とテレビで観たので、薄味を心がけ、ご飯も茶碗1杯。でも最近は濃い味付けになってきてしまっているかなあ」
そう言うが、「茶碗1杯」は山盛りで、奥さんに「もっと入れて」とねだるほど。「これがワシの腹八分目!」と豪快に笑う。
ある日の献立は、朝食はレーズン入りのバターロールと玄米茶。昼食は、自ら釣ったアジの刺身に大根の煮つけ、キャベツサラダ、豚汁、白米。取材に訪れたのはちょうど夕食時で、食卓には、アジの煮つけ、豚肉と大根と人参の煮びたし、ピーマンの煮物、昆布の佃煮、梅干し、白米、玄米茶が並んでいた。肉も魚もよく食べる。
酒はあまり飲まない。嗜好品は、コーヒーを1日4~5杯、少量の砂糖を入れて飲むだけで「安上がりな体だよ」と笑った。