日本銀行と政府が「政策総動員」のアベノミクスを展開したものの、現状、大きな効果は出ていない。黒田東彦総裁が打ち出した異次元金融緩和の期間はすでに3年半を超え、太平洋戦争の3年9か月より長引くのは確実で、日銀はかつての日本軍と同じ轍を踏んでいるのではないか──経営コンサルタントの大前研一氏はそう批判している。財政危機から破綻への道を避けるためには、何が必要なのかを大前氏が解説する。
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安倍晋三首相はプライマリーバランス(基礎的財政収支)の2020年度黒字化を目指すと表明しているが、消費税率10%への引き上げを2019年10月に延期したことで完全に不可能となった。このままでは財政危機から財政破綻に向かうことが確実なのに、出てきたのは事業規模28兆円の実効性なき経済対策だ。
戦時中の日本とのアナロジーは他にもある。新聞をはじめとするマスコミが、安倍政権の過ちを正面切って批判していないことだ。多少の批判はしていても解説や説明が中心で、大々的に批判の論陣は張っていない。あたかも戦時中の「大政翼賛」のような状況で、アベノミクスを批判して増税や財政再建を主張すると「お前は景気を腰折れさせる気か」と“非国民”扱いをされてしまう。
つまり、現在の日本は安倍一強体制下の全体主義国家のような状態であり、たとえ安倍首相が間違っていると思っても異論を差し挟むことはできない、という空気に覆われているのだ。
だが、今の日本の財政状況は、太平洋戦争で言えば、すでにミッドウェー海戦の段階を過ぎているかもしれない。今後、ガダルカナル撤退からインパール作戦、サイパン玉砕、本土空襲、沖縄戦、原爆投下へと向かい、最後は焼け野原──すなわち国債のデフォルトかハイパーインフレになってしまうだろう。