ライター・カーツさとう氏による前立腺がん「PSA(前立腺特異抗原)検査」初体験記も、第3回にしてついに最終回を迎える。さとう氏が、市の健康診断と同時に、胃がん、肺がん、大腸がんの検査に加え、今や男性罹患率No.1のがんに躍り出るといわれている前立腺がんの検査も受けてから3週間。ついにその結果の出る日がやってきた……。
* * *
検査結果の出るその日の朝。オレは本気でビクビクしていた。
なにしろ一度に4つものがん検査をしたのである。“ヘタな鉄砲、数撃ちゃ当たる”という諺があるように、4つも受けりゃ1個くらいひっかかるんじゃないか? という、確率論的には破綻してそうだが、どこか一理ありそうな不安が脳裏から離れない。
「さとうさん、アナタ、がんです」
「ガ~ン!!」
終戦直後のドサクサ時代からすでに言い古されていたに違いないビンテージギャグのような世界が今日、もしかすると己が身の上に現実として降りかかってくる可能性はゼロではないのだ。
そんな精神状態のまま病院に着き、待合室で順番を待つこと30分。オレの名前が呼ばれる。
「あ、ハイ」
自分を鼓舞するかのようにちょっと大きめでワンオクターブほど高い声で返事をし、しずしずと診察室に入る。イスに座り、オレの検査結果らしい書類を眺めてた先生がオレに気付いて顔をあげる。
「あ~さとうさんね…」
「あ、はい」
「まずぅ~、肺がんだけどね……」
「はい…」
肺がんだけに“はい”と答えたワケではない。
「まぁなんの問題もないね」
「あ~、良かったですゥ~」