国内

「老人スポーツはカネになる」──業界と厚労省の思惑

シニアのスポーツには様々なリスクが潜む(イメージ)

「健康で長生きするためには適度な運動が不可欠」と皆が言う。だが、果たして「適度な運動」とはどの程度のことなのか。知識もないままに闇雲に体を動かし続けた結果、かえって体を痛めてはいないか。

 実はシニアのスポーツには、さまざまなリスクが潜んでいる。マラソン、サイクリング、水泳など、身近なスポーツでも時にケガや病に至る運動リスクが潜んでいる。それは、今年7月、趣味のサイクリング中に転倒して頸髄損傷の重傷を負った谷垣禎一・前自民党幹事長(71)が現在も入院中なことなどにもあらわれている。

 それでも何らかの運動をしようというシニア層が後を絶たないのはなぜか。その最大の理由は、多くの運動実践者たちが語るように、「運動すれば健康になる」という“思い込み”があるからだろう。

 だが、「運動で健康になる」と呼びかけるデータには、欺瞞が散見される。たとえば厚労省所管の法人である全国健康保険協会(協会けんぽ)は、厚労省が示す健康目標として「1日平均60分の運動(65歳以上は40分)」を奨励しているが、その続きにはこうある。

〈平日に時間がないという人は、週に1回フィットネスクラブにいって1時間運動したり、1時間テニスをするなど、「高めの強度の運動を一度にまとめて60分」という方法もあります〉

 これには、専門家たちも呆れ顔だ。

「毎日60分の運動と、週に1時間のハードな運動を同列に並べるのは、いくら何でも無理がある」(東京都健康長寿医療センター研究所の青柳幸利・老化制御研究チーム副部長)

「単純計算で運動時間が7倍も違う上に、通常の運動と強めの強度の運動は、目的が異なります。“運動なら何でもいい”という誤解を招くもとで、効果的な運動を指導する立場の人に失礼です」(大阪樟蔭女子大学健康栄養学科の石蔵文信教授)

 まさに運動(啓蒙)を目的化する行為といえるが、背景に「運動ブームはカネになる」という空気が漂っていることも見逃せない。大手スポーツメーカー営業マンは本音を明かす。

「シニア層は時間も貯蓄もあり、一人前のものを揃えたいとか、若者と肩を並べたいという見栄もある。そこに“運動しなければ”という強迫観念が加わるから最高の顧客になっています。

 ゴルフ用品や自転車といった高額商品からウォーキングシューズに至るまで、“シニアも使いやすい”という宣伝は効果絶大で、しかも一般向け商品より割高な価格設定でも売れ行きがいい」

関連記事

トピックス

九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
“鉄ヲタ”で知られる藤井
《関西将棋会館が高槻市に移転》藤井聡太七冠、JR高槻駅“きた西口”の新愛称お披露目式典に登場 駅長帽姿でにっこり、にじみ出る“鉄道愛”
女性セブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン