あたたかいろうそくの炎のゆらめきには、癒しの効果があるといわれている。なかでも、表面に和紙が施された「アロマ和ろうそく灯之香」(7560円)は、その重厚感あふれるフォルムが目を引き、ギフトに人気だ。
作っているのは、江戸時代、慶応年間創業の「小大黒屋商店」(福井県福井市)。曹洞宗大本山永平寺をはじめとする各宗派御用達を務める、和ろうそくの老舗専門店だ。
同社専務で7代目の大津竜一郎さんによると、開発のきっかけは東日本大震災の後の計画停電だったという。
「多くの問い合わせをいただきましたが、和ろうそくは燭台がないと安全に使えません。そこで、電気が普及する以前は日常の照明として使われていた和ろうそくを、宗教行事ではない生活の中で、安心安全に取り入れてもらえるものを作りたいと思ったんです」(大津さん・「」内以下同)
材料と作り方の基本は伝統手法を踏襲し、不燃性の皿や台の上に置いて安定する形を模索した結果、直径10cmの極太の円柱状に辿り着く。
「3Dプリンターを利用して形やサイズの試作を繰り返しました。その上で、ろうそくの直径と芯の太さを調整し、熱が外側まで届かないようになっています。それに、燃え残った外壁が風防となるため、多少の風には動じず、燭台がなくても安心して使えます」
火を灯すと、ろうそくの外側約1cmは燃え残り、芯周りの部分のみが溶けて沈んでいく。そのため、時間の経過とともに炎が外側を照らし出し、行燈のように模様が透けて見える構造だ。
「外側に不燃加工した越前和紙を貼ったことで、火を灯さない時も美しく、火を灯すと紙の模様が浮き上がります」 また、大津さんはこう補足する。
「ろうは古々実(ここみ)と呼ばれる櫨(はぜ)の実を、2年寝かせて熟成させてから絞ったものを使っています」
和ろうそくで初めてというアロマは、食事中でも邪魔にならない、ほのかなフローラルの香りになっている。
※女性セブン2016年11月24日号