アメリカの大統領選挙は共和党のドナルド・トランプ氏の劇的な勝利となった。それにしても不思議なのは、なぜ「絶対にあり得ない」はずのヒラリー・クリントン氏の敗北といった結果が導かれたのかということだ。国際問題アナリストの藤井厳喜氏は、「そもそもヒラリー氏有利の下馬評自体が誤りだった」と見る。
「アメリカは男女平等が進んでいる国だと思っている日本人は多いでしょうが、実際には違います。男女の賃金格差は日本と同じレベルですが、大手マスコミが経営者や軍トップに女性が就く一部の例を大きく取り上げることで男女平等の幻想が広がっているだけ」
意外なことに、その趨勢を決したのは女性たちだった。国際ジャーナリストの山田敏弘氏の指摘だ。
「ヒラリー大統領の誕生を嫌う男性票がトランプ支持に流れたという論調が目立ちますが、今回の結果は、むしろ想像以上にヒラリー氏が女性に嫌われていたことが大きかった。セレブ向けファッション誌の『VOGUE』が異例のヒラリー支持を表明するなど、彼女の周囲は成功したセレブな女性たちで固められていました。そうした面が『鼻につく』と、シングルマザーなど一般の女性たちの強烈な反感を買ったのです。
トランプ氏のほうが好かれたというよりも、ヒラリー氏がより嫌われていたというのが実態だと思います」
皮肉なことにアメリカの女性たちは、「女性」であるヒラリー氏よりも「女性の敵」であるトランプ氏を選んだことになる。
※週刊ポスト2016年11月25日号