韓国が燃えている。ソウルでは朴槿恵大統領の退陣を求める20万人規模のデモが発生し、支持率は歴代最低の5%にまで低下した。支持率が下げ止まらない理由を、産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏が解説する。
「縁故社会の韓国で珍しくクリーンな政治家として登場した朴槿恵が、裏では友人である崔順実(チェスンシル)に数々の便宜をはかっていた。韓国人が最も嫌うのが今回のようなコネ絡みのスキャンダルです。朴槿恵に裏切られたという恨みと、大統領とのコネを最大限に利用した崔順実への嫉妬心で、韓国国民の怒りに火が着いた」
実際、崔氏は大統領との“友人関係”を利用して演説内容や人事、外交政策にまで介入。自身が事実上のオーナーを務める2つの財団では、大統領の威光をバックに名だたる財閥企業から資金を拠出させた疑いが持たれている。また、自分の娘を名門・梨花女子大に不正入学させた疑惑もあり、私生活でもコネの恩恵を十分に受けていたといわれる。
朴氏も“親友の優遇”に関与していた疑いがある。昨年7月、青瓦台(韓国大統領府)にサムスンやロッテグループなど財閥企業のトップ17人を集め、自ら崔氏の財団への支援を訴えていたと報じられたのだ(11月9日付中央日報日本語版)。
人々が怒っているのは、単に崔氏が国政に介入したからではない。権力者と近しいだけで、傍若無人な振る舞いが許されていたことに怒っているのだと黒田氏は解説する。
「『恨(ハン)』の社会である韓国の人々は、『持てる者』と『持たざる者』に分けられ、コネの無い者はコネを持つ者に不満や恨み、嫉妬を向けます。日本人は理想に達しなければ、自らの努力が足りないから努力しようと思うが、韓国人は『コネを持っている奴が不当に得しているからだ』と他人のせいにして、ヒステリックなほど反発の声を上げるんです」(黒田氏)
※週刊ポスト2016年11月25日号