ライフ

塩には体を温める効果 「しっかり摂取した方がいい」と医師

塩分摂取が必ずしも高血圧に繋がるとは限らない

 ある60代夫婦の朝食のひとコマ──。食卓に並ぶのは減塩みそと塩分カット出汁を使ったみそ汁に、ほとんど塩っ気のない焼き魚と玄米。魚を一口食べると、ほとんど味がしないので、テーブルに置いてある減塩しょうゆをかけようとすれば「ダメでしょ!」と怒鳴られる。夫のA氏(67)はこう嘆く。

「もう妻の薄味料理にはウンザリです。ほうれん草のおひたしにしょうゆをかけることまで禁じられて参っています。

 たしかに、健康診断の血圧は上が145mmHg、下が95mmHg。医者から『高血圧ですね』と注意を促されています。妻も私の健康を考えてくれているからこそなのですが、定年後の数少ない楽しみである食事がここまで制限されると何とも辛いです」

 若い頃“濃い味”を堪能してきた男性にとって、高血圧予防のためとはいえ、過度な減塩生活は生きる気力さえも奪ってしまうものだ。病院食はもっと厳しい。

「軽度の狭心症で入院した病院のメニューは、薄味すぎて正直まずかった。管理栄養士が塩分は1食2g、1日6g未満にきっちり計算しているそうですが、みそ汁ではなくすまし汁、漬け物もなく寂しかった」(72歳男性)

 多くの病院では日本高血圧学会の『高血圧治療ガイドライン』が定める塩分摂取量「1日6g未満」をもとに減塩食で献立を決めている。厚労省の「日本人の食事摂取基準」策定検討会のメンバーで、浜松医科大名誉教授の菱田明・医師はこう話す。

「私の所属する日本腎臓学会でも塩分摂取量目標値は1日6g未満です。日本人の1日の塩分摂取量はだいたい12gと諸外国に比べても高い。しかし、いきなり6gは現実的ではないので、厚労省の定める『日本人の食事摂取基準』(2015年)では、当面の目標として男性8g、女性7gと設定しています」

 ここまで塩が敬遠されるのは、塩分が高血圧の主要因と考えられているためだ。しかし、この従来の考えを覆す新常識がある。石原クリニック院長の石原結實・医師はこう指摘する。

「塩分摂取量が必ずしも高血圧に繋がるとは限らない。日本人の平均摂取量となる10~12g程度なら問題ない。むしろ、体を温める効果のある塩は、がんやうつなど病気予防のためにしっかり摂取したほうがいい」

 1日12gがOKなら、日々の食生活はがぜん彩りを取り戻す。

「朝食にミックスサンドとミネストローネ、昼食に牛丼(並盛)、夕食に刺身盛り合わせ、出し巻玉子、おにぎり1個を食べて、さらに晩酌のツマミに枝豆をつけられる」(管理栄養士の岡田明子氏)というから、これまで苦しい減塩生活を強いられてきた中高年にとっては朗報だ。

※週刊ポスト2016年11月25日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

本格的に中国進出をめざすならば…(時事通信フォト)
《年内結婚報道》橋本環奈と中川大志の「結婚生活」に立ちはだかる“1万kmの距離” 2人の異なる“海外進出の希望先”
週刊ポスト
「池田温泉旅館 たち川」の部屋風呂に「温泉偽装疑惑」。左はHPより(現在は削除済み)、右は従業員提供
「水道水にカップ5杯の重曹を入れてグルグル…」岐阜県・池田温泉「高級旅館」の部屋風呂に“温泉偽装”疑惑 ヌルヌルと評判のお湯の真実は…“夜逃げ”オーナーは直撃に「誰からのリークなの? それ」
NEWSポストセブン
これまでジャズ歌手などとしても活動してきた参政党・さや氏(写真/共同通信社)
参政党・さや氏、歌手時代のトラブル証言 ジャズバーのママが「カチンときて縁を切っちゃいました」、さや氏は「そうした事実はない」…真っ向食い違う言い分
週刊ポスト
もうすぐ双子のママになる。Numero.jpより。
Photos:Mika Ninagawa
中川翔子3年にわたる不妊治療と2度の流産を経験 。 双子の男の子のママになる妊婦姿を披露して話題に
NEWSポストセブン
錦織圭とユニクロの関係はどうなるか(写真/共同通信社)
「ご本人からの誠意ある謝罪があった」“ユニクロ不倫”錦織圭、ファーストリテイリング広報担当が明かしたスポンサー契約継続の理由
週刊ポスト
趣里と父親である水谷豊
《女優・趣里の現在》パートナー・三山凌輝のトラブルで「活動セーブ」も…突破口となる“初の父娘共演”映画は来年公開へ
NEWSポストセブン
岐阜の「池田温泉旅館 たち川」が突然の閉鎖、事業者が夜逃げした(左は旅館のInstagramより)
【スクープ】岐阜県の名所・池田温泉の人気旅館が突然の閉鎖 町が運営委託した事業者が“夜逃げ”していた! 町長からは228万円の督促状、従業員が告発する「オーナーの計画」 給料も未払いに
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏は2017年にダブル不倫が報じられた(時事通信フォト)
参院選落選・山尾志桜里氏が明かした“国民民主党への本音”と“国政復帰への強い意欲”「組織としての統治不全は相当深刻だが…」「1人で判断せず、決断していきたい」
NEWSポストセブン
オンカジ問題に揺れるフジ(時事通信)。右は鈴木善貴容疑者のSNSより
止まらない「オンカジドミノ退社」フジテレビ社内で話題を呼ぶ
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
《元人気芸妓とゴールイン》中村七之助、“結婚しない”宣言のルーツに「ケンカで肋骨にヒビ」「1日に何度もキス」全力で愛し合う両親の姿
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《まさかの“続投”表明》田久保眞紀市長の実母が語った娘の“正義感”「中国人のペンションに単身乗り込んでいって…」
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【スクープ】大谷翔平「25億円ハワイ別荘」HPから本人が消えた! 今年夏完成予定の工期は大幅な遅れ…今年1月には「真美子さん写真流出騒動」も
NEWSポストセブン